米国で初の鳥インフル重症患者、加州が非常事態宣言、乳牛の感染「制御できない段階」
封じ込めに苦戦する酪農場
家畜における鳥インフルエンザの流行を封じ込めることは、公衆衛生の潜在的な脅威を減らすために重要だ。しかし、畜産業と規制当局は、その実現に苦戦している。 「数十年前からH5N1型に対処してきた養鶏業者とは違い、酪農業界は何世代も前からウイルスによるこうした脅威を経験したことがないからです」と、全米酪農生産者連盟の主任科学責任者であるジェイミー・ジョンカー氏は説明する。 現在乳牛の間で流行しているH5N1型鳥インフルエンザウイルスは、2023年の終わり頃にこのウイルスに感染した野鳥が、テキサス州の酪農場で乳牛の乳腺にウイルスを感染させたことが発端だと考えられている。 「私が知る限り、牛乳から鳥インフルエンザウイルスが見つかったことはなかったので、みんな驚きました」と、米アイオワ大学食品安全保障・公衆衛生センター長のジム・ロス氏は言う。「極めて特異な状況でした」 感染した牛の乳には大量のウイルスが含まれている。ウシからウシへの感染は、主に搾乳器具を介して広がっているようだ。そして、ウシからヒトへの感染は、ウイルスに汚染された乳汁に触れた酪農場のスタッフの作業着や長靴を通じて起こる。 コロラド州は7月に、酪農場からの出荷前にバルクタンクに貯蔵されている生乳の検査を義務付けた。また、感染した牛を隔離するように指示し、車両のタイヤの定期的な消毒、訪問者の制限、作業員のための厳格なバイオセキュリティー手順の策定など、より厳格な対策を義務付けた。 この対策は効果があったようだ。コロラド州では1カ月以上新たな感染例は報告されていない。 10月には米国農務省(USDA)が全米で生乳検査プログラムを開始した。しかし乳牛の数が多く酪農場がひしめくカリフォルニア州では、この対策は遅きに失した感がある。「カリフォルニア州はウイルスを制御できていない段階です」とジョンカー氏は言う。