米国で初の鳥インフル重症患者、加州が非常事態宣言、乳牛の感染「制御できない段階」
1. ブタの間で鳥インフルエンザが大流行
科学者が最も懸念しているのがこのシナリオだ。H5N1がブタの間で流行しはじめれば、ヒトの間で流行するおそれが劇的に高まるはずだ。なぜならブタは、トリのウイルスとヒトのウイルスに同時に感染する可能性があるからだ。 インフルエンザウイルスはRNAウイルスで、変異しやすいだけでなく、ほかのウイルスと遺伝子の一部を交換する「遺伝子再集合(reassortment)」という能力も持っている。 例えば、ブタがトリのH5N1型インフルエンザウイルスに感染し、その時たまたまヒトの間で流行していた季節性インフルエンザウイルスにも感染した場合、2つのウイルスがブタの体内で出会い、遺伝子再集合によってお互いの特徴をランダムに獲得するおそれがある。 その後どうなるかは運次第だ。遺伝子再集合によってできたウイルスの多くはすぐに消滅するが、時折、生き延びるウイルスが生じる。そのウイルスがヒトの間で増殖・感染する能力を持ち、感染が広がる機会を得たら、新たなヒトの病原体となる可能性がある。2009年の豚インフルエンザのパンデミックはメキシコのブタで発生したと考えられている。
2. 乳牛の間で制御不能な感染が拡大
乳牛の鳥インフルエンザの大流行から、ヒトのパンデミックにつながるウイルスが生じるおそれもある。 ブタと同様、ウシもヒトとトリのインフルエンザウイルスに同時に感染するが、科学者たちは、ウシの生理学的特徴から、遺伝子再集合が起こる可能性はブタよりも低いと考えている。乳牛を経由するルートの場合、専門家は、遺伝子再集合はヒトの体内で起こるのではないかと推測している。 乳牛が鳥インフルエンザウイルスに感染すると、酪農場のスタッフとその家族、友人、地域社会のメンバーなど、多くの人がウイルスにさらされることになる。そして、鳥インフルエンザウイルスと季節性インフルエンザウイルスの両方に感染したヒトの体内で、遺伝子再集合によってヒトからヒトへと感染するタイプの鳥インフルエンザウイルスが生じる可能性は十分にある。