踏切自殺強要事件の殺人罪適用、カギは同行の有無 専門家「逃げられない状況か」
昨年12月、東京都板橋区で、塗装工の高野修さん=当時(56)=が、踏切で自殺に見せかけられて殺害された事件で、東京地検は27日、高野さんへの殺人と監禁の罪で元同僚の島畑明仁容疑者(34)と野崎俊太容疑者(39)を、監禁罪で佐々木学容疑者(39)と岩出篤哉容疑者(30)を起訴した。佐々木・岩出両被告は殺人罪に関しては処分保留。 【写真】男性が電車と衝突した踏切=2023年12月28日 殺害の実行行為がないことなどから、高野さんの死亡については、起訴段階で「殺人罪」が適用されるのか、「自殺教唆罪」などとなるのかが注目された。 「自殺者の自由な意思があったかどうかが、判断を分けた」。甲南大名誉教授の園田寿氏(刑法)は、こう推察する。 園田氏が、挙げるのは2つの判例だ。 一つは昭和29年、妻の浮気を邪推した夫が妻に暴行を加え続けた末、首つり自殺をさせた事件だ。この事件では広島高裁は自殺教唆罪を適用した。もう一つは、平成16年に保険金取得を目的とした男が女性を岸壁から車ごと転落させた事件で、このケースでは、殺人罪が適用された。 両事件の違いは、加害者側の同行の有無にあるといい、園田氏は「逃げられない状況かが重要なポイントだ」とする。前者は、夫が妻の「自殺」現場におらず、自殺教唆罪にとどまったという。 今回の事件では、高野さんは遮断機をくぐり線路に入って、走ってきた電車にはねられた。すぐそばで、被告ら監視しており、逃げられない状況だったと考えられるという。このため、園田氏は被告らの殺人罪の適用は妥当だとみている。(外崎晃彦)