「チャレンジ」がプレッシャーに? 東芝社長「過大な要求した認識ない」
歴代社長が厳しい利益目標の達成を求めた「チャレンジ」。東芝の不適切会計問題の背景として、第三者委員会が調査報告書で指摘した。当期利益至上主義や目標必達へのプレッシャーが今回の問題を招いたとするが、21日に行なわれた会見で、田中久雄社長は「過大な要求をした認識はない」と述べた。
田中氏は、そもそも自身は「チャレンジ」という言葉は使っておらず、「必達目標値」と言っていたという。少なくとも自身が就任した2013年6月以降については「予算の組み方を変えたつもり」といい、「過大な要求をしたという認識はない」とこうした見方を否定した。ただ報告書は、田中氏の要求は実質的に「チャレンジと異なるものではない」と評価している。 田中氏は「実現可能であれば努力すればできる。努力しても出来ないレベルであれば、必達目標値として要請することは適切ではないという認識はある」としながらも、「実現可能なレベルで各カンパニーに要請していたと認識している」とあくまで適正な要求だったと述べた。 報告書の中には「プレッシャーを与えた」という記述もある。田中氏は「目標を掲げること自体は決して悪いことではない。それが実現可能なレベルなのか、不可能なレベルなのか。そういったレベルの差であり、受け手の認識があるのではないか」との見方を示した。 過去の会見では「経営陣がプレッシャーをかけるのは当然」と発言していたことについて問われると、「プレッシャーがあるから不適切会計をやっても許されるんだ、ということではなかったと思うが、そういうものが少しでもあったのが今回の原因だとすれば、経営陣として深く反省をしなければいけない」と述べた。 「チャレンジ」は、西田厚聡元社長や佐々木則夫前社長ら歴代社長の下で行なわれてきたが、一方、田中氏自身が西田氏や佐々木氏からプレッシャーを受けていたということは「ない」と言い切る。 報告書は、佐々木氏が社長時代、月例会議で「残り3日間での120億円の営業利益の改善を強く求めた」ことがあったと指摘。残りわずかな期間での目標達成へのプレッシャーが「不適切な方法によらざるを得ない状況」に追い込んだケースが多かったと総括している。こうした異常ともいえる利益改善要求になぜ「ノー」と言えなかったのか、との問いには「回答を控えさせていただきたい」と明言を避けた。 (撮影:山本宏樹)