幽霊を見る人、見ない人 / 幽霊を見てしまう理由とは?
寝苦しい日が続きますが、真夏の熱帯夜といえば怪談。コワ~い幽霊の話を聞くと、背筋がゾクっとしますよね。単に涼しくなるだけではなく、本当に幽霊の気配を感じた…なんて経験がある人もいるのではないでしょうか。「霊感がある」などとよく言いますが、幽霊に出会ってしまう人と、一生出会わない人には、どのような違いがあるのでしょうか?
「幽霊が出そう」という予期が幽霊を呼ぶ
人間は、「なにかが起きそうだ」と予期していると、実際にはなにもなくても、その「なにか」が起こったように感じる性質があります。『超常現象の科学』(文藝春秋)という著書のあるリチャード・ワイズマンがおこなった面白い実験を例に説明しましょう。この実験では、実験参加者に緑色の液体が入った香水瓶を見せ、瓶の蓋を開けるとすぐに強いペパーミントの香りがすると説明しました。そして、瓶の蓋を開けて「ペパーミントの香りがしたら、挙手してほしい」と頼んだところ、実験参加者の半数近くが手を挙げたといいます。しかし香水瓶に入っていたのは、無臭の染料で色をつけただけの水だったのです。「香りがする」と予期することで、存在しない香りを感じてしまったというわけです。 前述の『超常現象の科学』には、幽霊に関する実験も紹介されています。心理学者のジェームズ・フーランは、閉鎖された劇場に実験参加者を集め、ユニークな実験をおこないました。フーランは実験参加者を2つのグループに分け、いっぽうのグループには「この劇場には幽霊が出る」と伝え、もういっぽうのグループには、単に「この劇場は改装中だ」とだけ伝えました。そして劇場のなかを歩き回ってもらったところ、幽霊が出ると聞かされていたグループは、あちらこちらで幽霊の気配を感じ、そうでないグループは、なにも感じませんでした。幽霊が出るかも…とびくびくしていると、単に床がきしんだだけでも、ラップ音(幽霊が立てた音)のように感じてしまうものです。
壁のシミが幽霊に見えるワケ
なかには「気のせいじゃない、実際に幽霊を見たんだ!」という人もいるかもしれません。たとえば心霊スポットで写真を撮ったら、壁に幽霊の顔が浮かび上がっていた…そんな話をよく聞きます。しかし、明るくなってから確かめると、顔のように見える木目だったり、壁のシミだったりと勘違いの場合も少なくありません。・・は単なる記号にしか見えませんが、・_・のように横棒を1本加えるだけで人の顔に見えてしまいます。そして、いったん人の顔に見えてしまうと、もうただの記号として見ることはできません。 この顔文字のように、単に2つの点々を見ているときと、その点々の間に口をイメージさせる直線を加えたときでは、脳の第5次視覚野の働きがずいぶん変わることが明らかになっています。人間が社会で生きていく以上、他人の表情には敏感にならざるを得ません。自分の視界に顔らしきものを見つけると、脳が敏感に反応し、はっきり顔として認識してしまうというわけです。 1976年にNASAのバイキング1号が撮影した「火星の人面岩」という写真をご存知でしょうか。火星の表面に、人間の顔の形をしたモニュメントが映っており、「火星人の建造物か!?」と話題になりました。 この人面岩の写真は作りものではなく、NASAが撮った正真正銘の本物なのですが、後年の調査によって、地形がたまたま顔に見えただけだということがわかりました。このように単なる模様を、人間の顔や人影のようにすり替えて錯覚してしまうことを「パレイドリア」といいます。
日本には幽霊が見える人が多い?
こういった知識があれば、幽霊っぽいものが見えても「気のせい」で済ませることができます。そもそも、幽霊の存在を信じていない人は、幽霊の気配を感じることもありません。逆説的になりますが、幽霊をよく見る人は、少なくとも幽霊の存在を信じている人ともいえます。 インターネット調査のネオマーケティングが実施した調査によると、グラフのように幽霊の存在を信じている人は、過半数以上にのぼります。これはある意味、幽霊に出会いやすい素質を持った人が多いともいえます。幽霊の目撃談が絶えないわけですね。 (伊丹治生/フリーライター)