3時間かけても「来たいから来る」子どもたち。自由に試遊錯誤できる、山中のフリースクール
子どもの"いいところ"は大人の価値観がつくっている
「『いもいも教室』は自分の中から生まれた『やってみたい』を思う存分試せて、失敗したり方法を考えたりするんです。学校に行っていないから代わりにここで学ぶ、という場所じゃありません。そもそも学校に通わないといけない、勉強ができないといけない、と考えて仕組みをつくっているのも大人ですよね。 『いもいも』の創立当初から、子どもを変えることは目的にしていません。そうじゃなくて、子どもと向き合う大人の目線が変わることを目標にしています」
子どもの未来を考えるが故に、社会で能力として測られやすい学力や社会性を身につけてほしいという保護者の思いは当然だ。しかし一方で、それは大人の安心のためでもあって、子どものためなのか?と井本さんは問う。
「規律がしっかりした学校もあるなら、それと正反対の場所だってあっていいと思うんですよ。人は結果的な答えやルールにのっとらなくても事象を受け止める感性や感覚を持ち合わせています。本来は身体性や試行錯誤しながら工夫をし、自分でやり方を見つけていくのが学びだと思うんですよね。 そういう時間がなかなか割けず、子どもたちからも失われつつある現代だから、感覚を信じられる場が必要なんです。学校へ行ってない子たちの場所ではなく、子どもが試行錯誤して自分で答えを見つける過程に大人が口を出さない場所が、ここなんです」
そして学校へもう一度行く、という選択肢
取材そっちのけで子どもと遊び、全身雪まみれになった午後。子どもたちより少し早めに檜原村を後にした。たった数時間しか遊んでいないのに「また来る?」と声を掛けてくれる子どもたちと話していると、「俺はもうそのときにはいないからなー」と教えてくれた子がいた。 話を聞くと、中学から学校に通うことを決め、自由な校風に定評のある学校を受験し、合格したそうだ。取材中も他の子どもたちのことを色々教えてくれた彼と一緒に、橋まで一緒に歩きながら「そっか、また学校行きたくなったんだ。楽しみ?」と聞くと「まあね! 行ってもいいかなと思って」と答えが返ってきた。それを聞き、自分から「学校に通うこと」「教室で学ぶこと」を自分の人生の選択肢の一つとして考えられている小学生は、日本にどれだけいるのだろうと立ち止まる。