3時間かけても「来たいから来る」子どもたち。自由に試遊錯誤できる、山中のフリースクール
「子どもの内側から生まれた『やってみたい』を思う存分に試せるのは、スケジュールがないというのが一番大きいんだと思います。平日に学校へ通い、放課後は宿題があると、自由に使える時間は本当に少ない。その少ない時間で教わった以外の解き方で宿題をしたり、新しい方法を試す時間ってないですよね。教員も膨大な業務を効率的に進めたいという気持ちと、生徒をしっかり見てあげたい思いで葛藤しています。 けどここは、帰る時間しか決まっていない。そもそも勉強をする場じゃない。効率よく遊べとか、こういう遊びをしようとか、大人が口を出すことじゃない。だから自由に試行錯誤する時間がたっぷりあるんです」 学校側も、限られた教員数で子どもの安全や学習をするためには、ルールを設けざるをえない。加えて、2020年から続いた3年間のコロナ禍では行動を制限され、公園で遊ぶことすら憚られた時期もあった。社会が設けた制限がどれだけ子どもたちに影響があったか、想像は難しくない。 焚き火を調整する子どもを見ながら「この子は入学5日で学校行くのやめたんですよ」と井本さんは続ける。子どもの前でその話題を出すことに内心ビックリしつつ、話を聞くと「お姉ちゃんに『入学式は行きなよ~』って言われたから入学式行って。そのあと『5日くらいは行きなよ~』って言われたから5日間は行って。そのあと、やめた!」と変わらないテンションで話してくれる。ほかの子どもたちも「私も行ってないよ」「俺は週1でここに来てる」など、それぞれの状況を教えてくれる。 彼らの話を聞いていて気付けたのは、「学校へ行かない」という表現に含まれる数えきれないバリエーションだ。子ども自身が「行かない」という選択をとっている場合もあるし、「必要ない」と思っている場合もある。「行けなくなった」という子もいるだろう。そんな子どもたちに驚きながら、学校へ行っていないと聞いて後ろめたさを感じていたのは、他でもない大人である筆者だと気付く。