3時間かけても「来たいから来る」子どもたち。自由に試遊錯誤できる、山中のフリースクール
学校へ行かないことだけが正しいわけではない。そして、学校へ行くことだけが正しいわけではない。大切なのは、子どもたちが大人の作ったレールに乗っていないかということ。そして感覚を頼りに活動できる場が、身の回りにあるかということ。森の教室で身体と心をいっぱい使いながら、「正解」の存在を気にせずに試みる姿がそれを教えてくれる。
取材の後日、「森の教室」に通っている子どもの保護者にもお話をお伺いした。小学校入学から母親の付き添いと共に登校していたが、二年生に進学してからは登校をやめ、いもいもの森の教室に通っているそうだ。 「井本先生に出会う前も何個か違うフリースクールへ行っていたんですが、何か月かすると『もうここはいいや』と言い始めて、なかなか続きませんでした。けれどいもいもに通うようになってから、少しずつ『ここは絶対安心』と自分の中で整って、感覚が鈍くなっていったというか。そうして段々と慣れていき、今年の初めから、森へ一人で行けるようになったんです。 学校という枠が、感覚が敏感な彼女にとってはすごい怖かったみたいで。母子分離がまだまだで、同学年で考えると発達が少しゆっくりなので、幼いところもすごく多いし、まだまだ語彙力も少ないです。そうすると、学校では否定される場面が本当に多くて。教室のみんなを同じレベルに持っていこうとしますから。例えば、言われた意味が理解できなかったら『どうして意味がわからないの?』と否定されるし、『なんで?』と積極的に聞かれる。周りの環境や先生の支援を隣で見ていて、もうここで頑張らせる必要はないなと思いました。 井本先生や土屋先生は、彼女が緊張してても声をかけずにいてくれたり、自分から喋り出せる空気を作ってくれる。そうしてポロッと出てきた言葉がどんなに小さな声でも、聞き逃さず拾ってくれるんですよね。 去年までは、まだまだ感覚が鋭く『自分は生きていちゃいけない』という言葉が出たり、自己否定が強く出る子でした。けれど最近は、そういう言葉も出てこなくなって、安心できている。彼女の中に、"生きる"っていうことの軸が立ってきたように見えます」