「人を幸せにするおカネ」を研究したら「笑顔」にたどり着いた ウェルビーイングで地域を幸せにするには
重要なのはコミュニティの仕組み作り
――具体的にはどのようなことをおこなっているのでしょうか。 まずは予備実験という位置づけで、2023年3月から広島県江田島市で設置しています。地元のコミュニティ活性事業を手がける運営者の方々と協力して、この装置を活用しながら地域の皆さんの笑顔を可視化し、コミュニケーションの活性化につなげていくという取り組みです。 この予備実験等を通じて、わかったことがあります。単に装置を設置するだけでは効果が薄かったのです。一方でコミュニティの中に設置した場所では、エミーウォッシュ利用頻度と主観的幸福度は相関することがわかりました。装置を日常的に活用し、コミュニケーションのきっかけとして機能させるためには、地域の中で笑顔を大切にする世話役のような人材が必要だということもわかりました。 その後、2024年8月に私たちは全国の自治体に向けてエミーウォッシュを無償で配布するスマイルシティプロジェクトを本格的に始動しました。自治体の方々と協力しながら、地域のウェルビーイング向上に取り組もうというものです。 予備実験の結果から、テクノロジーだけではなく、それを生かすためのコミュニティの仕組みづくりが重要だと考えています。だからこそ、自治体と連携しながら、地域の実情に合わせた活用方法を一緒に検討していきたいと思っています。 例えば、高齢者施設や学校など、笑顔の循環を生み出せそうな場所に設置してもらい、そこで働く人たちが笑顔を大切にする文化を醸成していくことが理想的です。そうすることで、笑顔が地域に広がっていき、ひいては地域全体の幸せにつながっていくはずです。 また、エミーウォッシュのデータを活用して、笑顔の回数に応じて小学校に寄付をおこなうなど、笑顔の循環経済を実現する取り組みもおこなっています。装置に蓄積された笑顔のデータを、企業のマーケティングや健康経営にも活用してもらうことで、笑顔の価値を経済的にも循環させていきたいと考えています。