「人を幸せにするおカネ」を研究したら「笑顔」にたどり着いた ウェルビーイングで地域を幸せにするには
笑顔が「感謝最大化のお金」の象徴
――背景にあるのは、どのような考え方なのでしょうか。 私たちが取り組むウェルビーイングの考え方の根底にあるのは、「感謝最大化のお金」というコンセプトです。 これまでの資本主義社会は、利益最大化を追求する「ゼニー」の論理が支配的でした。しかし本来、お金とは人と人をつなぐ「信用」の象徴だったはずです。そこで私たちは、「エミー」という概念を提唱しました。これは、感謝の気持ちを最大化するお金の在り方を表しています。例えば、雪下ろしをしてくれた人に感謝の気持ちを贈るお菓子代など、利他的なお金を介した人と人とのつながりを大切にするものです。 このエミーとゼニーの両立こそが、真の意味での幸せなお金の使い道につながるのではないかと考えています。そこで保井先生らと共同で、さまざまな実験やワークショップをおこない、この考え方の実践可能性を追求してきました。 このエミーの象徴が「笑顔」なのだと私たちは考えたのです。笑顔には、自分自身の良い気持ちが表れると同時に、相手にも良い影響を与える力があります。笑顔を通じて、人と人とのつながりを深められるはずです。エミーウォッシュはまさにこのエミーの精神を体現する装置だと位置づけています。 ――エミーウォッシュが商品化されたのは2020年9月とのこと。これまで企業やコミュニティでどのように活用されてきましたか。 企業においては、主に2つの活用場面があります。 1つは接客です。小売店舗などで、店員の笑顔の状態を可視化し、より笑顔の多い接客を心がけるきっかけとして活用されています。 もう1つは健康経営の文脈です。企業の従業員の笑顔度合いを測定し、ウェルビーイングの向上につなげる取り組みに活用されています。 一方、地域コミュニティでは、先ほどの広島県江田島市の事例のように、地域の「縁側」的な場所に設置し、地域住民の笑顔を見守り、コミュニケーションの活性化につなげています。例えば、ケアワーカーの方々が笑顔を大切にする文化を醸成するのに役立ててもらうといった事例があります。