日本の大学の学費は「人生で2番目に高い買い物」 海外では無償の国も
東京大学が授業料の値上げに踏み切ったことで、大学の学費に対する関心が高まっています。海外の大学では、学費はどのようになっているのでしょうか。小林雅之・桜美林大学特任教授(東大名誉教授)に聞きました。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長、写真=Getty Images) 【写真】小林雅之・桜美林大学教育探究科学群特任教授(写真=本人提供)
教育費は親が負担すべき?
――日本では、大学の学費は「親が負担するもの」と考えられています。海外では、どうでしょうか。 3つのタイプに分かれます。 1つはフランスなどのヨーロッパに多い、国が負担する福祉国家型です。北欧のフィンランドやスウェーデンは福祉国家として有名ですが、国立大学も私立大学も、学費の家計負担はほぼゼロです。フランスも国公立大学の授業料は無償です。ドイツは一時期、授業料を取った時期もありましたが、基本的に国立大学は無償です。 対してアメリカは、授業料は高く設定して、奨学金などの支援金を充実させる制度です。例えば、ハーバード大学の学費は年間1000万円を超えていますが、実際には授業料減免や給付型奨学金が出るので、学生1人が支払う学費の平均は150万円程度だと言われています(為替相場によって異なる)。満額を払っている学生は2割か3割程度しかいません。 3つ目が、授業料の後払い型です。オーストラリア、イギリス、ニュージーランドなどです。たとえば、オーストラリアでは、高等教育拠出金制度(Higher Education Contribution Scheme)、通称ヘックス(HECS)と呼ばれる授業料制度を取り入れています。大学在学中はお金がかからず、社会人になり、収入が得られるようになってから支払う「後払いシステム」です。 ――社会人になってから返済する日本学生支援機構の貸与型奨学金のようなものですか。 貸与型奨学金と異なるのは、払う額が卒業後の所得に連動している点です。収入の高い人は返済額をたくさん払う必要がありますが、収入の低い人は低く抑えられ返済の負担が軽い、というシステムです。 日本でも2024年度に修士課程を対象に、日本学生支援機構の無利子奨学金として「授業料後払い制度」を導入しました。ただし、日本なりの制約があります。オーストラリアなどは原則、全員加入が必須ですが、日本は選択制です。返済額が所得に連動するため、将来、高い収入を見込めそうな人は入らないでしょうし、逆に見込めなさそうな人は入りたいと思うでしょう。結局、全額返済しない所得の低い人が多く加入することで、授業料総額を未払いということが生じやすくなります。本来は、全員が参加しないと立ち行かないシステムです。今年から始まったので、まだ多くの人には知られていない制度ですが、学部生にも広げるべきかどうかなど、議論が必要です。