「寿命半分」を掲げた電車、登場30年超で〝再就職〟できる秘訣は? JR東日本209系、置き換え用車両も判明 【鉄道なにコレ!?】第68回
「寿命半分」のうたい文句は、実は車両の使用期間を従来の半分にして廃車にするという意味ではなかった。その真意は、209系を使う想定期間を会計制度上の電車の減価償却期間に合わせることで、過度な設備投資で経営を圧迫する事態を防ぐことだった。 減価償却期間とは固定資産の購入額を耐用年数に合わせて分割し、費用として計上する期間を指す。電車の場合は13年間と定められている。 実際には13年を大きく超えて使い続けられる電車がほとんどだが、209系は減価償却期間の13年間にわたって大規模な改造などをしなくても運用できるようにと設計された。その上で、減価償却期間が済んで「元を取った」時点でもう少し運用を続けるのか、他の路線に転籍させるか、あるいは他社に譲渡するのかなどを判断できるようにした。 ▽背景に「国鉄が行き詰まった反省」 このような考え方が生まれた背景を、元JR東日本役員は「どんぶり勘定だった国鉄の経営が行き詰まったことへの反省があった」と説明する。
放漫経営を続けていた国鉄は「コスト低減よりも、長く使える頑丈な車両を納入することを強く要求していた」(当時を知る元車両メーカー幹部)とされる。例えば209系が投入された京浜東北線の場合、異なるタイプへの置き換えはあったものの103系が1965年から98年まで使われ続けた。 耐久性を重視するあまり製造コストが高過ぎた車両も多く、設備投資が膨らんだ。国鉄は巨額の赤字が慢性化し、総額約37兆1千億円もの債務を抱えて実質的に経営破綻した。このうち大半に当たる約24兆2千億円を国が承継し、国民負担となった。 大きなつけを払うことになった国民が、JRグループに対して厳しい目を向けたのは論をまたない。顔を洗って出直すことを迫られたJR東日本は、電車ならば減価償却期間の13年間使うことを基本設計にして開発するようになった。 このため、長期間使い続けることを前提としたオーバースペック(過剰性能)の車両は必要ではなくなり、「価格半分」を標榜した低コスト化の道が開かれた。