本当にヘルシー? 低脂肪や無脂肪の乳製品について知っておくべきこと
味の違い
シェフや料理界の有名人は脂肪を重要視していて、脂肪=風味であると考える人も多い。そして、この考えは決して間違っていない。脂肪はそのほかの味への媒介として機能し、食べ物に対する感覚的な体験に大きな影響を与える可能性がある。研究によると、人間の舌には脂肪を検知するための特定の受容体があり、それらの受容体がドーパミンなどの神経化学物質の放出を引き起こす可能性が示唆されている。つまり、人の体が脂肪のある食べ物を楽しむようにできていることを示す科学的証拠があるという。 脂溶性分子は、水溶性分子のように舌の上で溶けたり薄まったりせずに、食品に含まれるほかの風味を運び、増幅させる独特の能力を持っている。無脂肪や低脂肪ヨーグルトは含まれる脂肪が少ないため、乳糖や乳固形分、酸性度の検知が困難になる。無脂肪乳の味を水っぽいと感じる人が多い理由の一つは、ここにある。 また水っぽさを感じるもう一つの要因は、質感。脂肪によって牛乳に粘性とコクが追加され、牛乳特有のクリーミーさが生まれる。そして、食べ物の硬さ(または柔らかさ)は、飲食体験の楽しさにおいて重要な役割を果たす。人によっては、全乳や全脂肪ヨーグルトの濃厚さや強さが苦手な場合もあるけれど、それはそれでOK。ただし低脂肪乳製品の味が嫌いな人は、脂肪不足が原因である可能性が高い。
料理への応用
牛乳やヨーグルトは、そのまま食べる以外にもさまざまな活用方法がある。シリアルボウルに加えたり、自家製マカロニ&チーズのベースにしたり、自家製ナンに使用したりと、乳製品は非常に汎用性が高い。料理に関するよくある質問は、生クリーム、ハーフアンドハーフ、全乳を無脂肪乳に置き換えても大丈夫かというもの。その答えは、ほとんどの場合ノーである。 無脂肪の代用品では再現できない高脂肪乳製品のコクだけでなく、脂肪分子には乳製品を凝固から保護する重要な役割がある。熱や酸性度を加えると乳製品の反応が始まり、たんぱく質が凝固して塊になる。自家製リコッタチーズを大量に作る、などの状況でなければこの凝固は避けたいもの。 牛乳に含まれる脂肪は保護層を作り出す。これらの脂肪分子はたんぱく質を覆い、凝固を防ぐバリアとして機能する。そのためコンロで無脂肪乳を調理すると、最終的にはほぼ確実に固まってしまう。無脂肪乳は、熱や高濃度の酸にさらさない限り料理に使用しても問題ないけれど、安定感と豊かな風味を得るには全乳を使うのがベストと言えそう。
translation : Mutsumi Matsunobu cooperation : Yumi Kawamura photo : Getty Images