デジタルシフト強める文藝春秋がめざすもの
『週刊文春』『文藝春秋』電子版会員にインタビュー
ノンフィクションの書籍についても聞いた。 「今話題になっているのは、11月22日に発売された追分日出子さんの『空と風と時と 小田和正の世界』ですね。定価が税込3190円もする本ですが、12月上旬現在5刷4万部とよく売れています。11月27日に出た春日太一さんの『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』も定価2750円ですが、出足好調で早くも3刷1万6000部です。 ハードカバーで分厚い本格派ノンフィクションが売れているのはとても嬉しいことです」(同) 文春新書では原発問題をずっと追っている青木美希さんの新刊『なぜ日本は原発を止められないのか?』が11月17日に刊行され、重版がかかり、阿川佐和子さんの200万部の大ベストセラー『聞く力』の続編『話す力』も出版されるという。 また月刊『文藝春秋』の最近の新しい試みとしては、11月から読者を招いての講座を始めたことだ。 「11月11日に第1回の文藝春秋講座を、保阪正康さんをお呼びして、抽選で選んだ20人ぐらいの会員を対象にリアルで行いました。もともと『座談会』とか『講座』という言葉を作ったのは菊池寛ですから、こういうリアルのイベントも今後は積極的にやっていきたい。それによって『文藝春秋』のコアな読者、いわゆるロイヤルユーザーとの繋がりをさらに深めていきたいと考えています。 今、『週刊文春』『文藝春秋』電子版の会員は、それぞれ1万2000~3000人ですが、その中で年間契約をしてくれている方はあわせて5000人以上います。このロイヤルユーザーに個別にインタビューをお願いしていますが、大変参考になるデータが得られています。 また付き合いの深いクライアントに電子版の法人契約をお願いしているのですが、これも企業の方々が文藝春秋に何を期待しているのかを理解するのに役立っています。やっぱり対面でお話を聞くことは大切ですね」(同) 『週刊文春』にたくさんの情報が寄せられていることや、新聞社の記者などが転職を希望してくることなど、同誌の評価が高まっていることに伴う動きもこの1~2年、目立つという。