日本で生きづらかった女性が「人はなぜ生きるのか」を探求すべくフィリピン・カオハガン島へ 自然×人の唯一無二の体験とは
愛に触れた感覚
2011年、大学4年生の時に初めてカオハガン島を訪れた。 「今まで信じていた『豊かさ』とは違う価値観が見つかるかもしれない、という期待を持ちました」 大学生のスタディーツアーはホームビジットも含まれていた。島民の家に半日の訪問体験をさせてもらう。佑子さんはオロイさんというお宅にお世話になった。その日、オロイさんが連れて行ってくれた魚釣りでの出来事が忘れられないという。 「船にはオロイさんの息子(当時5歳)が一緒にいたんです。その子が膝に乗ってきて、私の髪を結い始めました。そしたら私、急に涙が出てきてしまって。この子は初めて会ったのに、私がどんな背景とか、何ができるとか、そういうことをまったく恐れず接してくれたんだと感じて……」 佑子さんは5歳の少年の行動に胸が熱くなった。素っ裸の内面に触れられた感覚だった。 「社会や誰かに認めてもらうため、そして孤立しないために、いつも何かをまとって生きてきたんだけど……着ているはずの鎧は透けていて、私の気持ちもすべて見られている気がしました」
卒業論文「学び合う観光」
佑子さんはこの出来事で、島の人たちがどう生きているのか知りたくなった。そして大学の卒業論文をカオハガン島についての研究に決めた。タイトルが『学び合う観光・フィリピンカオハガン島が投げかける「豊かさ」への問い』。全135ページに自然、歴史、医療や教育などの暮らしや、島民の価値観・生き方が書かれている。 論文の中で触れられているが、カオハガン島は1987年に崎山克彦氏が購入した島だ。崎山氏は島民へ「自然と共にあるシンプルな暮らしは素晴らしいので、ありのままを見せよう」と伝えた。そして観光者へは「学ぶ姿勢を見せてほしい、島で感じたこと、学んだことを自分の住む地域で継続してほしい」とお願いした。観光客はお金を落とすだけではない、島民はお金をもらうだけではない関係を提案した。(観光客には島民と直接お金や物のやり取りをしないようお願いしている)この双方の立ち位置が明確になり、カオハガン島の「社会全体」が観光資源となった。それにより「豊かさ」の循環が起きていると、佑子さんは言う。