日本で生きづらかった女性が「人はなぜ生きるのか」を探求すべくフィリピン・カオハガン島へ 自然×人の唯一無二の体験とは
コロナ、台風に見舞われたカオハガンの苦労と試行錯誤
大学卒業後、スタディーツアーの添乗員の手伝いを始めた。そこでコーディネーターとしてカオハガン島に1ヶ月滞在した。その後、崎山氏に「島で2ヶ月ほど運営スタッフとしてやってみないか」と声をかけられ、島民を頼りながら手探りで仕事をした。そして2015年1月、正式にカオハガンハウスのマネージャーに任命された。 現在、アイランドホッピングの観光客も含めると、世界中から毎月約3000人が訪れる。そのうち、宿泊者は平均月50人、日本人が95%、次いで台湾人が多い。 2020年コロナ禍で島の往来が禁止になり、観光に大きなダメージを受けた。それに加えて、2021年12月に大型の台風が島を含む地域一帯を通過し、家や船などが壊滅状態になった。幸い人的被害は免れたが、日常生活に多大な影響を受けた。 「すべてがぐっちゃぐちゃになって。弱気になったスタッフもいたんですが、何か方法を探そうと声をかけ合いました」 この時、佑子さんは幼少期に何もないところから生み出して遊んだ経験を思い出していた。 「子どもの頃、必要なものをすぐにお金で買うのではなく、自分で作り出してみるという精神が、今役に立っているのかなと気がつきました」 コロナ禍や、大型台風の直撃という危機を、島の特産品カオハガンキルトのネット販売や、クラウドファンディングで島を立て直す工夫をした。「多くの方がカオハガン島に手を差し伸べてくれたので、これからもしっかり守らないと、という気持ちに駆られました」倒れた植物、椰子の木は徐々に息を吹き返し、約一年がかりで復興にたどり着いた。
ハルくんがもてなすお誕生日会
取材で島を訪れる前に「息子ハルの誕生日会にぜひいらしてくださいね」と招待を受けた。ハルくんは佑子さんの長男だ。12月24日、お昼過ぎに誕生日会場へ向かった。パーティーの場所は宿泊ロッジから徒歩で5分ほど。途中、椰子の木が覆う道にはニワトリが何羽も飼われている。食用や闘鶏用だ。犬や猫も木陰で寝そべっている。教会の裏だというその場所へ辿り着く自信がなく、島民に案内をお願いした。 到着すると、すでに10名弱の子どもたちがランチを終え、ケーキを待っていた。ハルくんを囲むのは佑子さんとご主人、ハルくんの弟、そして学校のクラスメイトと、先述したオロイさん家族だ。誰かの合図で誕生日ソングの大合唱が始まる。ハルくんは恥ずかしそうに違う部屋へ逃げ隠れするが、歌は続いた。そしてロウソクを消したハルくんが自ら包丁を持ち、ケーキを分け始める。ケーキを食べ終わると、子どもたちは申し合わせたかのように一斉に中庭へ走った。 「ハルが計画したゲーム大会が始まるんです」と佑子さんは教えてくれた。親戚からお祝いにお金を少しもらい、「自分でもてなす誕生会」を思いついた。そのお金で駄菓子を買い、みんなとゲームをして景品として渡す。 ゲームは10種以上あった。「カラマンシーを口に入れても酸っぱい顔をしてはいけないゲーム」「小さなコピー用紙にペアで乗って、はみ出してはいけないゲーム」。「お題の物を指差すゲーム」は最初のお題が「白髪」だったことで大盛り上がり。こんなユニークなゲームが続いた。勝っても負けても大小なりと景品がもらえる。そして景品がなくなると、急いで近くのショップに追加で買いに行く子どもたち。それを3回ほど繰り返して、ハルくんのお小遣いは尽きたようだ。最後は新築の時に行う「餅まき」のように、2階からお菓子をばら撒き、みんなが競って取るゲームで誕生会は終了した。