アングル:米債投資家が利下げ幅縮小に備え インフレ警戒で長期ゾーン回避
Gertrude Chavez-Dreyfuss [ニューヨーク 16日 ロイター] - 米国債投資家は、来年発足するトランプ次期政権の下でインフレが再燃することで米連邦準備理事会(FRB)が利下げ幅を縮小する事態に備えつつある。 既に物価高のしつこさが見られる中で長期ゾーンへ資金を振り向けるのを回避する姿勢を続け、残存2―5年の中短期債保有を選好しているのだ。 インフレ懸念は長期債の売りを誘い、利回り上昇につながりやすい。 FRBは17―18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げて4.25―4.50%にするとの予想が大勢。しかしその後の政策運営について市場関係者の見方は定まっていない。 少なくとも1社、BNPパリバはFRBが来年いっぱい金利を据え置き、2026年半ばにようやく利下げを再開するとみている。一方で来年中に2回か3回の25bp利下げがあるとの声も聞かれる。 オールスプリング・グローバル・インベストメンツの債券チーフ投資ストラテジスト、ジョージ・ボリー氏は「タカ派的な利下げという方針が、データの内容だけでなく、次期政権による政策変更の可能性という点と整合性を持つ。FRBは市場に利下げペースの減速の受け入れを準備させようといる」と指摘した。 今回のFOMCに関して投資家は最新の経済物価見通し、特にFOMCメンバーの政策金利予想分布(ドットチャート)にも注目するだろう。50bpの利下げを決めた9月時点のドットチャートを見ると、来年末の政策金利は3.4%と想定されていた。 ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの米債券責任者を務めるグレッグ・ウィレンスキー氏は「FRBの経済物価見通しは9月よりもハト派色が薄まるだろう。50bp利下げ時の想定よりも経済が強くなっているとパウエル議長が言っている以上、これは適切だ」と説明。来年のドットチャートは従来からおよそ25bp切り上がると予想した。 ウィレンスキー氏は運用債券について、残存10年未満はオーバーウエート(指標より多く保有)、10年以上はアンダーウエート(指標より少なく保有)としている。 <関税の影> 年初から最近まで、債券投資家はFRBの利下げと景気後退の可能性を見越し、デュレーションを長期化、つまり残存期間の長い債券を購入してきた。金利低下局面では、相対的に利回りの高い長期債の魅力が増すためだ。 特に残存5─10年は金利低下で価格上昇の恩恵を確保しつつ、より長い債券よりも金利リスクは小さい。 ところが足元では一部投資家が逆にデュレーションの短期化に動いて残存期間の短い国債を物色するか、デュレーションを維持している。 JPモルガンのグローバル金利戦略責任者を務めるジェイ・バリー氏は「現在積極的にデュレーションを延ばそうとする向きは見当たらない。これは緩和サイクルがより縮小するという話だ」と述べた。 米商品先物取引委員会(CFTC)のデータからは、FOMCの開催週に入って資産運用会社が国債先物など長期ゾーンの買い越し規模を減らし、レバレッジド・ファンドは長期ゾーンの売り越しを膨らませたことが分かる。 オールスプリングのボリー氏は、投資家全体でも、財務省からの供給量や長期的な予想物価に左右される超長期債は敬遠されていると分析した。 トランプ次期大統領の減税や輸入関税がインフレを再燃させる、というのも市場参加者共通の見通しだ。これらの政策は財政赤字を拡大させ、長期債への売り圧力を高めることになる。 シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「関税は輸入物価押し上げを通じた潜在的なインフレリスクと言える。最終的には一過性の物価ショックで終わるか、持続的なインフレの発生源になるかのどちらかだ」と話す。 BNPパリバは関税などの影響で米消費者物価指数(CPI)前年比上昇率が来年末に2.9%、2026年に3.9%まで跳ね上がり、FRBは来年ずっと政策金利を変更しないと見込んでいる。 米国担当チーフエコノミストのジェームズ・エゲルホフ氏は、米経済の底堅さや政策金利が既に中立的な水準に近づいたのではないかとの懸念を背景に、FRBは利下げに対して「控えめ」な姿勢を見せていると強調。関税主導の物価上昇を見過ごすことはできないだろうと付け加えた。