「日本が"クマの惑星"になってからでは遅い」県政50年の秋田・佐竹知事が語る"アーバンベア"の恐ろしさ
■ハンターの高齢化で「技術の継承」が急務 ――秋田県では有害駆除の担い手であるハンターへの積極的なサポートをされているのが印象的です。今年度の補正予算でも、猟銃を購入する際の補助を拡充するなどの対策費として約6000万円を計上していますが、こういった施策はどういう経緯で出てきたのですか。 どうもね、私は意外と(銃を構える恰好をして)銃器マニアだから。大学でも防衛技術関連の研究をしていたもんでね。それで猟友会の方と話をしたりして、いろいろな要望をうかがったりする機会もあるんです。 例えば弾ひとつとっても今、円安の影響もあってかなり高くなっているんで、これは何とか補助しようと。満足とまではいかないけど、新規に狩猟免許を取得する若い方も結構増えてきたんですよ。やっぱりかつては猟友会といえば、比較的経済的に余裕のある自営業の方が多かったんですけど、今はそういう人たちが少ない。かつてそうだった人も一線をひいて、みんな70代を超えてますから、その技術継承という意味でも、ハンターの育成というのは急務だと思ってます。 それからドローンのような新技術を利用した駆除とか捕獲も検討の余地はあると思います。ドローンを使えば、人間が危険に晒されることなく、クマに近づくことができるわけですから、そういう新しい発想も必要になってくるんじゃないでしょうか。 ■「クマの惑星」になってからでは遅い インタビュー中、とりわけ印象的だったのは「クマの問題は、オールジャパンで取り組まないとダメ」という佐竹知事の言葉だった。 「それぞれの自治体がバラバラで取り組んでも限界はある。クマを殺すなとクレーム電話を入れてくる人たちに、なぜ駆除が必要なのかを理解してもらうための啓蒙的な活動を国がもっとやってもいいんじゃないかと思います。やっぱりクマが身近に出没しない地域に住む人たちにとっては、われわれの直面している現実というのは、なかなか理解しづらい面がある。だからといって、両者が対立したり、分断したりするようなことがあってはならない。現実問題としてクマの数は増えているわけだから、今はクマが出ない地域にも近い将来、出るようになるかもしれない。実際に東京でも西部のほうで目撃情報がありますよね」 そして、いかにもこの人らしい表現で、こう付け加えた。 「(日本が)『クマの惑星』みたいになってからでは遅いからね」 ---------- 伊藤 秀倫(いとう・ひでのり) ライター・編集者 1975年生まれ。東京大学文学部卒。1998年文藝春秋入社。『Sports Graphic Number』『文藝春秋』『週刊文春』編集部などを経て、2019年フリーに。さらに勢いあまって札幌に移住。著書に『ペットロス いつか来る「その日」のために』(文春新書)がある。 ----------
ライター・編集者 伊藤 秀倫