【バレー】過密日程のバレー界でアメリカ男子のベテランブロッカーが下した“休養”という決断「パリでメダルを獲る気持ちが今までにないほど強かったんだ」
仕事であるプレーで結果を出す、選手たちはそのための選択を下す
力を発揮するために、チャージする期間を設ける。その決断はプラスの効果をもたらした。ホルト自身も、それを実感していた。 「休暇自体は短いものでした。ですが、また代表に戻ってきたときには『みんなを手助けしたい』、そして『パリオリンピックで金メダルを獲る、僕たちの夢に挑戦し続けたい』という思いが私の中で今までにないほどに強くなっていました。それに、出場権獲得のために予選がどれほど大事か十分にわかっていましたからね」 2023年に代表にカムバックしチームに貢献するホルトの姿を、キャプテンのマイカ・クリステンソンは誇らしく口にした。 「彼はほんとうに経験豊富なミドルブロッカーですし、インクレディブルな(突出した)存在ですから。彼が加わることで、チームがさらに高まるんです。戻ってきてくれたことを心からうれしく思いますよ」 果たして男子アメリカ代表は予選を首位通過し、パリオリンピックの切符を獲得。失意の10位に終わった東京2020大会のリベンジ、そして通算4度目の金メダルへ向けて、一気に加速したのである。 ホルトのような例は、アスリートの“キャリアのアクティブレスト(積極的休養)”と表現できるだろう。心身ともに良好な状態を整えるために休む、それが次の戦いに向けた最適な準備となるのだ。 選手たちは、選手である以上、プレーすることが仕事。そこでは結果を求められ、同時に自身も結果を求める。2023年は代表活動もあってハードな1年間を過ごした柳田は不安を口にしつつも、「僕は自分から望んで、アジア競技大会を戦う日本代表に参加しましたから。プロとして活動する以上、自分の選択を結果につなげなければいけません」とその向き合い方を語っていた。ホルトもまた、パリオリンピックで結果を出すために、休養という選択をしたのである。
「バレーボール以外の人生を大切にできるように」とスパロー監督
その意思を尊重したスパロー監督は、バレーボール界に携わり選手を導く立場から、私見を語ってくれた。 「私も過密日程は問題だと感じます。プロ選手として活動して多くの収入を得る、その選手がいるからこそプロリーグも収益を上げられる。と同時に、選手たちは誇りを持ち、我々の場合は“チームUSA”として、代表チームでプレーすることを望んでいます。 何が解決策になるかはわかりませんが、スポーツにおける“最も重要な資産”であるプレーヤーたちをいかにケアするかは、今後も考え続けなければならないのは確かですね」 そうして最後に、スパロー監督はこう付け加えた。 「我々指導者は、選手たちが家族と過ごす時間を持ち、バレーボール以外の人生を大切にできるように取り計らうことを第一に考えています。プロ活動のない夏の時期は、練習は一日一回、週末は休ませる、といった具合にね。家族と充実した時間を過ごしてもらう、そうして家にいること自体が、いい仕事を生むのですよ」 アスリートである前に、一人の人間としての幸せを。そのことを前提として、選手とスタッフがともに歩む男子アメリカ代表。“夏休み”に趣味のギターを手にとり、愛犬ヴィヴィと過ごした時間が、ホルトにとっては何よりのカンフル剤であったのだ。 ※パリオリンピック プール戦/日本vs.アメリカは日本時間で8月2日(金)28:00-に実施予定 (取材・文/坂口功将 写真:Volleyball World)
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