虎”レジェンド”フィルダー”伝説のハマスタ場外弾”に重なる…なぜ佐藤輝明は衝撃の場外弾を放つことができたのか?
オープン戦でドラフト制導入以降の新人記録となる6本塁打を放った佐藤を打ち取るためのマニュアルはできあがっていた。インサイドを意識させておき、外角低めに変化球を落とす、横斜めの配球と、もうひとつは、縦の変化と緩急。インサイドに威力のあるストレートを投げることができて、ストレートと変わらぬ腕の振りで落とす変化球、あるいは、抜く変化球を持ち、コントロールを間違えさえしなければ、三振の山を築くことができる。実際、50試合で22三振は、セでは突出した数字だ。ちなみに2位は巨人の梶谷の14三振である。 プロの壁にぶち当たっていた佐藤が、この負の連鎖を脱出するには弱点を克服しなければならない。攻められている内角球を打つか、捨てるか、だが、佐藤は、打つことにこだわってきた。そのためスイングが力み、体の開きが早くなり、バットの後ろが大きくなって、ますます内角球が打てないという悪循環に陥っていた。いわゆる打ち急ぎ、バッティングの”間”がない状態。球団OBからは、「いっそのこと1打席捨てる打席を作って、ボールを見極めることを確認し、相手バッテリーに考えさせるのも手」との意見もあったが、佐藤は、この日も、第1打席から内角球を狙い打つことを貫いた。それが「逃げない」という彼の哲学なのだろう。 試合前のフリー打撃では、矢野監督と井上ヘッドから2人がかりのアドバイスを受けていた。何を教えていたかわからないが、動きから推測するにバッティングに重要な“間”の部分の話をしていたように見えた。濱口の内角球をライト前に打ち返した打席では、踏み出した右足に壁があり、バッティングフォームに改善の跡がうかがえた。 元千葉ロッテの評論家の里崎智也氏は、「内角球が得意の打者など12球団を見渡しても数えるくらいしかいない。問題は狙って打てるかどうか。プロのレギュラークラスはそれができる」と語っていたが、佐藤が狙って内角球を打ったことに意義があったのである。 6回の衝撃の場外弾の打席では、国吉が初球に高めに投じた151キロのストレートにバットを止めようとしていた。ハーフスイングを取られたが、内角球と共にもうひとつの弱点である高めの速球への見極めもできつつあったのだ。加えて国吉のコントロールにミスがあった。1球目も2球目も戸柱の構えたところにいかなかった。カウント1-1からの半速球となったカットボールが、ど真ん中へ。フルスイングした佐藤のバットの軌道に合わせて投げたような形になった。 スポーツメディアが伝えた広報談話で、佐藤は「打ったのはカットボール。少し高めにきたあまいボールをしっかり捉えることができました。試合前に矢野監督と井上ヘッドに指導いただいたおかげです。少し修正して自分のスイングができました」と語っている。