世界一の靴下屋を目指す「Tabio」、社名は「奥田民生さんに履いてほしい」から!? 人事部すらない、カリスマ経営者の会社を作り替えた2代目の思い
◆引き継ぐことをためらう若き承継者たちへ
――今後、承継を期待されている経営者の家族、親族にアドバイスはありますか? よく大学の経営学部に招かれて事業承継をテーマにお話しさせていただくのですが、最近、気になっていることがあります。 それは創業者のお子さんの中に、意外な理由で継ぎたくないという人が多いことです。 あまり苦労もせず、組織内で権力を持てる特別な存在であることに気が引ける、というのです。 私は「それは勘違いですよ」と答えます。 「社長は権力ではなくひとつの役割であって、その意味ではほかのポジションと大して変わりませんよ」と。 同時に、「そのポジションが与えられる環境に生まれてきたのなら、境遇を生かすのは自然なことですよ」とも話します。 たとえば、メジャーリーグの大谷翔平選手が子どもの頃、「自分は体格に恵まれて、打てば誰よりボールを遠くに飛ばせるし、投げれば誰よりも速い。野球の試合に出れば大活躍できるだろう。でも、気が引けるから野球をやめようか」と言ったらどうでしょうか。 おかしいですよね。 恵まれた体を持ったなら、それを生かせる道に進むのは自然なことです。 そんな消極的なことを考える前に、親の会社に入って「ああ、この人に社長になってもらいたい」と言われるほど活躍することを考えてはどうか、と伝えています。 せっかく組織の上に立つ人生を選ぶチャンスがあるなら、生かさないほうがもったいない。 どんな立場であろうと、努力して力を磨かなければいけないのは同じです。 迷っているなら、飛び込んだらいかがでしょうか。
■プロフィール
タビオ株式会社 代表取締役社長 越智 勝寛 氏 1969年、大阪府出身。1994年から約3年間、化粧品会社ハウス オブ ローゼで主に販売員として働いた後、父親が創業者である靴下専門の会社、ダン(現タビオ)に入社。商品部に配属されるいなや、それまでになかったカラータイツを売り出し、大ヒット。2003年に商品本部長となった後、2005年から2006年の1年間、経営者研修に参加。2007年に取締役第一営業本部長を務めた後、2008年に父・直正氏から経営を引き継いで代表取締役社長に就任。
取材・文/大島七々三