【毎日書評】上司との軋轢をどう乗り越えるか?研修医がたどりついたひとつの答え
越えられそうにない壁に当たるとき、ぐんぐん伸びを感じるとき、どうしようもない事情で伏していなければならないとき、大切な人を失って苦しむときなど、誰もがさまざまな段階を経て大人になっていきます。 そして、ひとつのステージを終えて次の段階へ進むまでには必ず扉のようなものがあるものでもあります。『医者の父が息子に綴る 人生の扉をひらく鍵』(中山祐次郎 著、あさま社)の著者はそれを、「人生の扉」と呼んでいるのだそうです。 この扉が開けば次のステージに進めますが、扉を開くのは容易なことではありません。どうしても行きたい志望校に行けず苦しむ数年間や、置かれた場所にまったく馴染むことができず悶える日々。親や兄弟などの家族が命を落としたり、大切な友人を失ったりして呆然とする季節。 本書には、そういった苦しいステージから次へと進むための「人生の鍵」について、ていねいに記しました。(「はじめに」より) 外科医として18年のキャリアを持ち、作家としては『泣くな研修医』シリーズ(幻冬舎)がベストセラーとなり、他にも『俺たちは神じゃない』(新潮文庫)などの小説も書かれている人物。 そのキャリアはいかにも華やかに見えますが、本人いわくこれまでの道はまったく順風満帆ではなかったのだとか。2年浪人して入学した医学部では人間関係や医学の勉強に苦しみ、医師になってからも2年間は病院敷地内の寮に住み込みで昼夜なく働き続け、ついで赴任した福島県の病院ではまた厳しい人間関係の場に置かれたというのです。 つまり本書では、決して少なくない自身の失敗体験をもとに、「いまだったらこうできるんだけどな」という、学びになりそうなことを記しているわけです。 失敗と挫折にまみれながらも、なんとか44歳の今までやってきた「負けの理由」とそこから学んだことがらを遠慮なく書いたのです。(「はじめに」より) そんな本書の第4章「人生の扉を開く鍵 新人外科医の成長」内の「上司との軋轢──キャリアを妨害されたら?」のなかから、子どもへ向けた「君への手紙」に焦点を当ててみたいと思います。