【毎日書評】上司との軋轢をどう乗り越えるか?研修医がたどりついたひとつの答え
自分の心に嘘をつく必要はない
若いころには、組織や上司が生理的に受けつけられないというようなことは往々にしてあるもの。 しかしそれを上手に隠してつきあうこともできず、かといって従わないと組織で居場所がなくなってしまうため、ひとりで悩みを抱え込んでしまったりするわけです。 では、どうしたらいいのか? この問いに対して著者は、選択肢を整理することを勧めています。 ① 自分の正義や価値観を突き通す(その場を去るという決断を含め) ② 妥協し、上司を尊敬しているふりをする ③ 上司のいいところを探し、尊敬できないかどうか検討する (232ページより) 著者の場合は、②を選んだのだそうです。理由は、それがいちばん穏便で、なにより「この職場で学び続けたい、働き続けたい」という希望を叶えるにはそうせざるを得なかったから。 一方、③は小学校の道徳の授業で正解として選ばれそうな選択肢かもしれません。もちろん、嫌な人のいいところを探し、尊敬できないかどうかを考えることができるのだとしたら、それは素晴らしいこと。しかし著者は、自分にはできっこないとも述べています。できる人は本当にひと握りだろうとも。 では、①を選ぶことは? まっすぐ、自分の心に100%正直に生きるとしたら、その選択肢もあり得るでしょう。とはいっても、自分の正義や価値観を突き通す方法は決してひとつだけではありません。 たとえば上司のところへ行ってキレ散らかし、大声で怒鳴ってそのまま仕事を辞めるという手段もあるでしょうし、あるいは、「なぜですか」と問うという方法も考えられます。 僕の友達には、いつも①を選んで生きている人がいる。とても立派だし、カッコいいと思うが、とても生きづらそうにしている。純粋でまっすぐに生きると、それだけ傷つく。それがこの世界だ。 僕は②を選んだと言ったけれど、それはそれで泣くほど悔しい選択だった。僕だって自分の生きたいように生きたい。おかしいことはおかしいと声を上げたい。 だから、僕は「演じる」ことにした。(233ページより) 映画やドラマの俳優のように、勤務する病院内においては、上司に従順な研修医を演じるのだということ。それは、ある程度はうまくいったようです。しかし現実的に、この世界を本音だけで生きている人は少なく、そういう人は短命でもあると著者は指摘しています。芸術家、作家、ミュージシャン、漫画家など、自分の正義や価値観を突き通す人は生きづらいというのです。 もちろん人にもよるはずですが、少なくとも著者の場合は、「だから、演じる」のだという考え方だということ。(231ページより)