食べ物が飲み込みにくい! 命にかかわる嚥下障害のサインを見逃さないで
Q 「嚥下」とは? 「嚥下障害」とは?
嚥下という言葉は、咀嚼してミキサー状になった食塊を飲み込むことを指しています。ですから、嚥下障害とは、「うまく飲み込めない状態」を指す言葉です。 一方、目の前のものを食物と認識して口に入れ、嚙み砕いて飲み込むという一連の流れは摂食といわれます。嚥下はその一部です。飲み込む前の過程に問題が生じ、そのためにうまく食べられなくなることもあります。 ですから、本来、食べることに問題が生じている場合には、摂食嚥下障害というのがよいのですが、最近は、「うまく食べられない状態」すべてを指す言葉として、嚥下障害と呼ぶことも増えています。 程度の差はありますが、年をとれば多くの人は「食べる力」が低下します。その影響で、嚥下障害をかかえやすくなります。口から安全に食べ続けられるようにするには、予防的なことを含め、積極的な取り組みが必要です。
Q 嚥下障害を放っておくと、どうなりますか?
うまく飲み込めないために起こる直接的な問題は、窒息や誤嚥の危険性が高くなるという点です。しかし、問題はそれだけにとどまりません。 ● 直接的な問題は窒息、誤嚥 窒息は、空気の通り道である気道がふさがれ、呼吸できなくなること。対応を誤れば死亡事故につながります。誤嚥は、食物や唾液が食道ではなく気道に入り込むこと。むせたり、咳込んだりといった症状が増えるほか、誤嚥性肺炎をまねく要因になります。 ● 十分な飲食ができず元気がなくなる うまく食べられない状態が続き、十分に飲食できなくなると、低栄養や脱水が生じやすくなります。栄養不足で体力・免疫力の低下が進むと、肺炎をはじめとする病気にかかりやすくなります。 ● 悪循環が起こりやすい 食べる力が弱くなると、連鎖的にさまざまな変化が生じます。食べると苦しい、体調が悪く食べる気力がわかないなど、さまざまな要因により食欲が低下しやすくなります。 また、口腔ケアがおろそかになると細菌が繁殖しやすくなり、口の中が粘ついて食品の味も悪くなり、ますます食べづらくなります。大病をしたり、体調を崩したりすれば、さらに嚥下障害は進み、ますます体力がなくなっていきます。 それぞれが悪影響を与え合う結果、嚥下障害が進み、口から食べられない状態になる危険性が高くなります。 「年だからそんなに食べる必要はない」「むせたりこぼしたりするが、一応は食べられているからいいだろう」などと問題視されないことも多いのですが、放っておくのは危険です。