不満も文句も出ない職場でこそ、ハラスメントの告発が多発する…!「パワハラ」提唱者が教える【上司が注意すべきポイント】
「ハラスメントは大ごとになるほど、むしろ本当の問題解決が難しくなる」「問題が小さいうちに、当人同士や職場内で解決できる道を探る」ほうがいい。前編から続いて、日本で初めて「パワハラ」という言葉を作った、ハラスメント対策・研究の第一人者・岡田康子氏に聞く。 【一覧】えっ、これもダメなの!?…「新型ハラスメント」44種類 前編記事『 「それ、ハラスメントですよ」と言って、自分を優位な立場に置きたがる部下たち 告発の意外なリスクとは何か?』より続く。
本質はコミュニケーションの問題
――問題を解決するためにあえて「ハラスメントにしない」という発想は、目から鱗です。そもそも、どうしてこれほど、人々が互いに攻撃し合う状況になってしまったのでしょうか。 今はビジネス環境の変化が激しく、価値観は多様化しており正解がない時代なので、過去のやり方や自分の考えが正しいとは限りません。上司が部下を叱って、ましてや強制的な方法で人を育てることはできません。 職場環境の変化も理由のひとつでしょう。SNSでは、多くの人の承認を気にするあまり、本音が言いにくいのではないでしょうか。同じように職場で不満があっても本音を出せず、自分の意見を口にしません。 ハラスメントと言われるのが怖くて部下に遠慮したり、逆に無視したりする上司も増えたように思います。しかし、お互いに深く本音で関わろうとしないことが、かえって人間関係のトラブルを誘発しやすくしているのではないでしょうか。何かあったとき、すぐに「ハラスメントだ」という話になってしまうのは、日々のコミュニケーションに問題があるからなのです。
「べき」思考が陥るワナ
――職場でうまくコミュニケーションをとれない場合、具体的にはどうするのがよいでしょうか。 実は、ハラスメントの加害者と被害者は、共に孤独だという共通点があるんです。被害者は、職場で孤立してしまい、相談相手もいない。加害者は、強くなければいけない、完璧でなければいけないという「べき」思考で人と関わるので、周りから避けられてしまう。本来の自分を大切にせず、自らを孤独にしていると言えるでしょう。 いくら優秀な人でも、一人で出来ることには限界があります。一人でやろうとせず、部下とともにやっていくという考えが重要です。また部下の機嫌をうかがうのではなく、自分の意見や会社の方針はきちんと言葉で伝える。それに対応できない部下を叱責するのではなく、「できない理由」に興味関心を持って、冷静に聞いてみる姿勢が大切です。 今の職場は、機能的で効率よくできています。また、成果や評価が厳しく問われ、職場にゆとりがなくなっているように思われます。 多少効率が悪いけれど、雑然として、がやがやと騒がしかった昔の職場も、悪いことばかりではなかったのかもしれませんね。 「週刊現代」2024年11月16日・11月23日合併号より 【詳しくはこちら】『ついに“ほぼ全ての行為”が「ハラスメント」に..ますます激増した「新型ハラスメント」の全容【チェックリスト】』
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