BリーグでのHC経験を引っ提げ、韓国バスケ界初の日本人コーチに就任した森山知広の挑戦(後編)「1日が終わるのがすごく早い」
積極的にやり続けて、1人のコーチとして成長したい
──男子から女子。日本から韓国。たくさんの変化の中で大変さは感じますか? 間違いなく体力的には大変ですね。Bリーグ時代はコートにいる時間って多くても4時間でしたけど、今は合計したら8時間くらいコートにいますから。指導のアプローチも男子よりもていねいさが必要だとわかりました。男子だったら1個ポンって言えば伝わることを、より噛み砕いて伝えないといけないんだなとか、練習メニューはただ動きを指示するだけでなく目的や意図も説明する必要があるんだな、とか。 ただ、僕は選手と密にコミュニケーションを取るタイプのコーチングなので、言語の壁はありますが、もうパッションでなんとかやるしかないと思っています。通訳もいますし。 ──通訳がいらっしゃるんですね。 そうなんです。でも自分でも勉強していますよ。昨シーズン、ストークスで韓国人の李相範アソシエイトコーチと一緒だったこともあって、耳が多少慣れてますし、よく会話の中に出てくる単語を通訳の方に聞いたり、本で調べて覚えて、単語でだんだん会話ができるようになってきてる感じです。ただ基本は「アニョハセヨ(こんにちは)」「カムサハムニダ(ありがとう)」「ケンチャナヨ(大丈夫)」で乗り切ってます(笑)。 韓国の若い子はアニメとか漫画で日本の文化にたくさん触れているので、そこはだいぶ楽ですね。「スラムダンク」もそうだし、「ハイキュー」「呪術廻戦」「ワンピース」…アニメを見て覚えた日本語で向こうから話しかけてくれる。日本のアニメって本当にすごいなって思いました。 ──WKBLという舞台で、チーム、そしてご自身をどのように成長させていきたいですか。 女子選手を指導するのは初めてですが、これまで私が経験してきたことを評価いただいてのオファーなので、まずはその期待に応えたいです。韓国に来る時に、こんなことを思っていました。Bリーグで指揮を取っていた時の『自分はヘッドコーチなんだ』という感覚をいったんリセットして、一人のバスケットボールコーチとして生きようって。監督やコーチたちに自分にどんなバスケットが見えていて、何を感じたかを伝えることで、チームに新しい視点をもたらせたらいいな。そう思って韓国に来ました。 言葉の壁もありますし、うまく伝わらないことも、難しいなと思うこともたくさんあります。でもそこで退いてしまったら何もできなくなるので、積極的に1年間やり続けて、いちバスケットボールコーチとして成長する。それが個人的な目標です。 チームは昨年初めてプレーオフに出て、今年はさらに上を狙ってるタイミングなので、「あの日本人コーチが来てハナ銀行は変わったよね」、「強くなったね」って言っていただけるような結果が出るのが、1番ハッピーです。 ──最後に、応援してくださっている方々にメッセージをお願いします。 シーズンが終わってすぐに契約満了リリースが出たことで、ご心配をおかけしたかもしれません。誰もやったことのないチャレンジに挑むための決断でした。成長するために韓国に来たので、引き続き応援してもらえたらうれしいです。3月末にWKBLのシーズンが終わって、4月には神戸に新しいアリーナがオープンしますし、日本に帰ったら新しいアリーナでのゲームにぜひ足を運びたいなと思っているので、そこでみなさんに会えるのを楽しみにしています。 そして機会があれば、韓国に足を運んでWKBLの試合を見に来ていただきたいですね。下手したら日本国内を遠征するよりも近いですし、LCCがたくさん飛んでいるので飛行機もけっこうリーズナブルだったりするんですよ。平日の試合も多いのでBリーグ観戦ともうまく両立できます。ぜひ会場で私を驚かせていただけたらうれしいです。
取材=古後登志夫 構成=青木美帆