忍耐力のないクレーマー、モノの価値がわからない客が増加中…いま「お客さんの劣化」が進む「深刻なワケ」
カスハラ(カスタマーハラスメント)、やっかいなクレーマー、モノの価値がわからなくなっている消費者……。マーケティングの専門家で、著書に『顧客の数だけ、見ればいい』がある小阪裕司氏は、「お客さんの劣化」が進んでいると警鐘を鳴らす。その原因と対策について、くわしく解説してもらった。 【写真】心ない人に「マウンティング」されたら使いたい…相手をビビらせるフレーズ
「お客さんの劣化」がなぜ進んでいるのか
なぜ世の中にやっかいなお客さんやクレーマーが増えているのでしょうか。 私はそれを「お客さんの劣化」という言葉でとらえています。 「お客さんが劣化している」……というとなんだか失礼な言い方に聞こえるかもしれないのですが、実際、そうとしか言いようのないケースが増えているのも事実です。 これは最近、多くの教育現場から報告されている話です。 ある学校で、担任の先生が生徒に「今週末に読書感想文を提出してください」と宿題を出しました。すると、親御さんたちから次のような質問が寄せられたそうです。「どんな本を選んだらいいですか?」「感想文は何文字くらいが適切でしょうか?」「書き方がわからないので、見本をもらえますか?」。 このようなことは読書感想文に限らず、運動会であれば「どんな種類の帽子が適しているか」「何リットルの水が必要か」といった持ち物に関してや、「準備中に自分の子どもが遊びたがった場合はどうすれば良いのか」などの質問が寄せられるのだといいます。 不安もあるのだと思いますが、私がこのような話を聞いて思うのは「そんなことまで聞かないとわからない人が増えているのか」という驚きです。 つまり、明確な答えを、「具体的にこうしてああして」まで教えてくれないと動けない人が増えているということ。それを私は「劣化」という言葉でとらえています。
「すぐに答えがわかる」時代の弊害
こうした人が増えている理由の一つは、ITの発達により「すぐに答えがわかる」時代になったことでしょう。 人間の脳は使わないと劣化します。カーナビが発達したことで道を覚えなくなるといったことは、まさにその好例です。 先日、ある学生から聞いた話が強烈に印象に残っています。交際相手からのLINEに返事する際、どのように返事をしたらいいかをChatGPTに聞いている人が周りにいる、というのです。 確かに、「それらしい」答えを得ることはできるでしょう。しかし、こうしてすぐに答えが得られるようになると、考えることをしなくなる。すると、「考える力」は劣化します。 そして、すぐに答えが得られないと、イライラしたり爆発したりする。実は人というのは、より「便利」になると「忍耐力」が弱くなります。 やっかいなお客さん、クレーマーの増加の背景にはこのような「お客さんの劣化」があるのではないかと、私は考えています。 ではそういう「やっかいなお客さん」とはどう付き合うのがいいのか。 そこは、「静かに手を引く」が適切。それができるよう、「顧客の数」を増やしていくことです。