忍耐力のないクレーマー、モノの価値がわからない客が増加中…いま「お客さんの劣化」が進む「深刻なワケ」
「お客さんのリテラシー」も劣化している
一方、そういう問題とはまったく別種の、今日的な「お客さんの劣化」も起こっています。 それは、「お客さんのリテラシー」の劣化です。 「リテラシー」とは、デジタル大辞林によりますと、 (1) 読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。 (2) 特定の分野に関する知識や、活用する能力。 とされますが、ここでは特に(1)に関することを指します。「価値あるもの」の「価値」を、感じたり、理解したりする能力が劣化しているのです。 それは、たとえばこういうことです。ある呉服店主が言うには、「最近のお客さんは、安い着物と高級な着物の違いがわからない」。 なぜ、そんなことが起こるのかといえば、「情報が足りていないから」です。 先の呉服店主も、「そういう方には少し時間をかけ、いい着物をたくさん見てもらい、いろいろなことを説明していくと、そのうち次第に見る目が養われていく」と言いますが、「情報が足りない」とは、そういう機会が少ないということです。 「この情報があふれ、簡単に手に入る時代に?」と思われるかもしれませんが、「だからこそ」です。 このような問題は今日しばしば警告が発せられており、「エコーチェンバー」とか「フィルターバブル」などの言葉を聞いたことのある方も多いと思います。 また、世界中に星の数ほどの発信者がおり、SNSなどを通じて日夜大量の情報が発信されていますが、多くは専門家ではありません。そういう人たちが間違った情報を発信していることもありますが、現在の「情報の受け手」はそれをしばしば鵜呑みにしています。 一方で、いわゆる「専門家」と呼ばれる人たちの発信は不十分です。私は数十万人、百数十万人のフォロワーを持つユーチューバーやティックトッカーとお付き合いがありますが、彼らは発信について考えに考え、日々、それを行っています。 それに比べると、専門家の多くは十分な発信をしていないと感じます。これはネット上に限らず、たとえばビジネスを手がける専門家たちが日々、店頭やその他の顧客との接点で十分な情報を伝えているかというと、心もとない状況です。 そうして、お客さんの「リテラシーの劣化」は進んでいきます。 * * * このような「お客さんの劣化」に私たちはどう対応すればいいのか? 後編記事〈「新潟の過疎地のスーパー」になぜ「ドンペリ」が並ぶのか?お客と売上を激増させた「意外な発想」〉では、ある地方スーパーの事例をもとに、顧客との向き合い方を考えていく。
小阪 裕司(オラクルひと・しくみ研究所 代表/博士(情報学))