美肌か?健康か? パリ在住ブロガー、フランスで冷奴を食べて実感したメリット、デメリットとは
パリと日本を行き来するブロガー、シロが、日々の暮らしから垣間見えるフランス人の意外な一面を紹介。 _____ 子どものころ、毎日夕食に冷奴が出た。木綿豆腐の、冷奴である。我が家は親類縁者を含め完全なる木綿豆腐勢力に属しており、異論は許されなかった。おそらくこのせいで、私は冷奴というものがすっかり嫌いになってしまった。木綿豆腐のあの硬さ、口の中でボロボロくずれ、箸で割ると無数の気泡が見える、あの様相すらも苦手だった。 幼い私にはちっともおいしいと思えなかったのだが、木綿豆腐至上主義である我が家ではいつも「木綿こそが真の豆腐」「絹ごしなどというチャラチャラしたものは豆腐ではない」「もっと木綿豆腐を味わい本物の大豆の旨味を知るべき」とされ、絹ごしへ鞍替えすることなど口にするのも憚られる雰囲気であった。この木綿豆腐勢力による強固な態度は、私の冷奴嫌いをますます加速させた。 だからフランスに来てから、自分がまさか進んで冷奴を食べたくなるなんて、思いもよらないことだった。いくら日本食が恋しくなっても、冷奴だけは例外だろうと思っていたのだ。 フランスで豆腐を買うとなれば、もちろんみなさん中華街の豆腐店へ行くだろう。日本食品店やアジア系スーパーでは、小さな豆腐が日本の数倍の値段で売られていることが常だからだ。でも安さだけが理由なのではない。現地のレストランも契約しているという、中華街で買えるこれらの豆腐は初めて私に冷奴を「おいしい」と思わせてくれた逸品であった。 大きさは、日本のスーパーで私が好んで買う豆腐(絹ごしだ)の4パック分くらいで、持つとずっしりと重く、硬い。でも木綿豆腐のように気泡が大量に入っているわけではなく、とてもなめらかだ。なめらかだけど普通の絹ごしのように脆く繊細ではなく、じゅうぶんに頑強で、凝縮された味がする。
とにかく買ってくると、どうしても食べたくなってすぐに3分の1くらいを食べてしまう。それだけでもかなりの量で、冷奴があんなに嫌いだったのに不思議なものだなあ、と思う。数日間で1丁食べ、2丁食べ、3丁を食べてしまう。そしてまた買いに行く、という豆腐の永久機関の完成である。 それはただ中華街で買う豆腐がおいしいということもあるし、早く食べないと傷んでしまうという焦りもあるし、また、「豆腐をストイックに食べ続けるととんでもなく肌がきれいになる」とのうわさを聞いたことも大きな理由であった。それはそれは、美しくなるというのだ。 どのくらい美しくなるかというと、まあ何というか、豆腐のようになってしまうらしい。なめらかで透明感があり、内側から発光するような艶が出て、吹き出物も治り、うるおいが増し、何なら気になっていた小じわも改善されたという、どこに出しても恥ずかしくないほど完ぺきに危険な誇大広告のような話だ。 これが木綿豆腐を食べ続けろと言われたのであれば拒否したが、何しろおいしいので自然に生活へ取り入れながら食べ続けることができた。 そうしてある日、鏡を見て、私は思った。 「豆腐だ......」 おお、イソフラボンよ......それは透明感があり輝くような、まさに自分史上最高に美しい肌だった。イソフラボンという強大な力にひれ伏したい気持ちになった。また、私は放っておくとほとんどタンパク質を摂らない食生活をしてしまうので、それも一因だという気もしている。