無料の3DCG統合環境「Blender 4.3」ではカスタムブラシが簡単に作成できるように!
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。 【画像】スカルプトモードのデフォルト画面。3Dビューポート左端のツールバーはすっきりし、代わりに下側にブラシが並ぶようになった 11月19日(中央ヨーロッパ夏時間)、「Blender 4.3」が公式リリースされました。 本リリースでは、ペイントやスカルプトのブラシのインターフェイスの刷新や、新バージョンのグリースペンシルのようなペイント系の新機能が目立ちます。 今回は上述通り、大きく変わったブラシのインターフェイスと、新しいグリースペンシルについて簡単にご紹介します。 ◆ ブラシアセットシステムの導入 ペイントモード(テクスチャ、ウェイト、頂点カラー)とスカルプトモードで、ブラシが「アセット」として利用できるようになり、従来ツールとして利用してきた機能も、その機能を使用するブラシを選択するようになりました。 インターフェイスも大きく変わり、ツールバーのツール群が整理され、さらに下側の[アセットシェルフ]にこの「ブラシアセット」が表示されるようになりました。 特にスカルプトモードでは、スカルプトツールの多くがブラシアセットに統合され、そのおかげで従来はデフォルトではスクロールバーでスクロールが必要だったほどのアイコンが、機能別にすっきりとまとまりました。 ■ ブラシアセットとは ブラシアセットとは、その名の通り、アセット化したブラシのことです。従来はブラシをアセットとしては設定できないため、他の.blendファイルから利用するには「アペンド」するなどひと手間が必要でした。 「v4.3」では、他のモデルアセットやマテリアルアセット同様、共有が非常に簡単になりました。デフォルトのブラシ群は130個もあり、「Blender」本体に同梱されています(エッセンシャルアセット)。 ■ 簡単になったカスタムブラシの作成 アセット化による恩恵が一番大きいのはカスタムブラシの作成です。従来もカスタムブラシの作成はできましたが、癖があり、共有も面倒という欠点がありました。 カスタムブラシの作成はまず、[アセットシェルフ]の既存のブラシアセットの右クリックメニューから[アセットを複製]を選択してブラシをコピーします。 ダイアログが表示されるので、名前を付け、保存先にユーザーアセットディレクトリを選択すれば、単一のアセット.blendファイルとして保存され、他のファイルや新規ファイルからもデフォルトブラシとともに利用できるようになります。 その後、テクスチャを追加したり、パラメーターを変更した場合も、カスタムブラシ上で右クリックメニューを表示して[アセットに変更を保存]を実行すれば反映されます。 ◆ グリースペンシルの刷新 グリースペンシルは、「Blender」内のドローツール(「Illustrator」や「Inkscape」のように、ピクセルではなく、線や曲線で画像を作成するツール)の1つです。 元々、3Dビューポートやノードエディターなどに注釈をつける「アノテーションツール」に、アニメーションやボーン変形、ライトによる照明に3Dモデルからの変換など、多くの機能で魔改造されてしまったのがグリースペンシルです。 主にストーリーボードやプレビズ(本制作前に試験的なビジュアルを作成すること)用に使用されることが想定されていますが、3Dと2Dのアニメーションの制作を考えている方にとっても制作ツール候補の1つになるかもしれません。 一見「v4.3」はブラシアセット対応以外はあまり変化がないように思えますが、上記のスカルプトモードのようにツールやプロパティも再編成されており、[グラデーション]ツールや「レイヤーグループ」の追加、カーブ編集モードの廃止などの変更点があります。 もちろん見えない部分もパフォーマンスの改善や、保存ファイルサイズの大幅な削減、ジオメトリノードへの対応など、大きく進化しています。その代わり後方互換性が失われており、「v4.3」で保存したグリースペンシルデータは以前のバージョンでは開けないので注意が必要です。 ◆ 終わりに 今回は「Blender 4.3」の新しいブラシアセットシステムとグリースペンシルについてご紹介しました。次回はレンダリング関連の新機能をご紹介する予定です。 ではまた。
窓の杜,山崎 聡