毎年登場の新iPhoneは1つのモデルが必ず落ちこぼれ
ここ数年、米アップルが毎年新製品を投入するiPhoneシリーズのうち、1つのモデルだけが売れ行きが芳しくない状況が続いている。それは中間価格帯に位置するモデルだ。 iPhoneシリーズのラインアップは近年、「iPhone」「同Plus」「同Pro」「同Pro Max」の4モデル構成だが、このうち「Plus」の販売が伸び悩んでいる。もし、4つの新モデル全てが堅調に伸び、かつそれらが互いに売り上げを奪い合う、カニバリゼーションを起こすことなく、全体として成長を遂げることができれば、iPhoneの売上高は過去最高を記録した2021年の水準に戻る可能性がある。 ■ 「Plus」は上位10モデルに入らず 香港の調査会社カウンターポイントリサーチによれば、24年7~9月期における世界スマートフォン機種別販売台数ランキングの上位3モデルは、(1)「iPhone 15」、(2)「iPhone 15 Pro」、(3)「iPhone 15 Pro Max」の順だった。一方、「iPhone 15 Plus」は上位10モデルに入らなかった。 他のデータを見ても、Plusモデルが後れを取っていることが分かる。スマートフォンディスプレー業界に詳しい米調査会社のDSCCは、24年10月までの年間パネル調達データを基に、ProとPro Maxモデルのシェアが毎年増加していると分析する。 一方、アップルのスクリーン調達全体に占めるPlusモデル用の比率は22年時点で21%だったが、23年は10%に低下した。24年はやや回復して16%となったものの、PlusはiPhoneの中で最も出荷台数が少ないモデルであることに変わりがない。
■ Plusモデル、22年に14シリーズで復活 20年にアップルが4モデルラインナップに移行した後、iPhoneの販売は大きく伸びた。このときは、「iPhone 12 mini」「同12」「同12 Pro」「同12 Pro Max」という構成で、Plusは含まれなかった。 だが、その後の22年、同社はiPhone 14シリーズでPlusを復活させた。これは、同社が14年に初めてiPhoneを2つの大きな画面サイズ((1)iPhone 6=4.7インチ、(2)同6 Plus=5.5インチ)で発売した際の空前の販売実績を再現しようと試みたものだった。しかし、米経済ニュース局のCNBCによれば、22年のPlus戦略はかつてのようにはいかず、Plusはその翌年も伸び悩んだ。 ■ 新しいハイエンドiPhone登場か アップルは今後もiPhoneの「4モデル戦略」を継続すると予想されるが、少しアプローチを変えるかもしれないとCNBCは報じている。下位モデルにminiを、中間モデルにPlusを配置する代わりに、新しい最上位モデルを導入する可能性もあるという。 アップルにとって、ハイエンドモデルの投入は理にかなっているとCNBCの記事は指摘する。近年、同社の高価格帯モデルは低価格帯モデルよりも好調だからだ。例えば、中国ではiPhone 16シリーズ発売後3週間、16 Pro・16 Pro Maxの販売が23年の15 Pro・15 Pro Maxと比較して44%増えた。16 Proシリーズはインドでも好調に推移しているようだ。 アップルにとって高価格帯モデルは売り上げ増につながるほか、利益率の向上と平均販売価格の上昇にも寄与する。加えて、熱心なファンを1つのハイエンドiPhoneにつなぎとめておくこともできるとCNBCの記事は指摘する。 24年会計年度のiPhoneの売上高は2011億8300万ドル(約31兆2000億円)だった。これは前年度比0.3%増と、ほぼ横ばいだった(アップルの決算資料)。
小久保 重信