新入社員がみんなで学ぶ 旭化成の「新卒学部」
学習時間が増え、キャリア不安の解消にも寄与
――「新卒学部」としてコミュニティー形成をしたことにより、どんな成果がありましたか。 梅崎:定量的な成果としては、学習時間が大きく伸びました。2022年度の新入社員向けにもe-learningのシステムを試験的に導入していたのですが、その時と比較すると2023年度の新入社員は学習時間が3.5倍になったのです。CLAPがあることに加え、コミュニティー活動の中でおすすめコンテンツを共有したり、学ぶ姿を互いに見ることで刺激が生まれたりしたことが理由だと考えられます。 また、CLAPや「新卒学部」の取り組みが、冒頭でお伝えしたような新入社員のキャリア不安という課題の解決につながったのかどうかを、社外の専門家の協力のもと分析しました。その結果「新卒学部の活動を通じて新しい分野に興味や関心を持つきっかけがあった人」や「会社の制度としてCLAPを利用している人」は、キャリア不安に関するスコアが有意に低いということがわかりました。CLAPの活用や、新卒学部での学び合いにより、キャリア不安が低減することが数字として見られたのは大きな成果だったと思っています。 定性的には、「コミュニティー活動を通じて同期メンバーとのつながりができた」「自分の学びを発信することで、誰かに還元できる喜びがあった」「入社1年目からこのような学習機会があったことが、モチベーションにつながった」などの声が参加者から聞かれました。お互いの頑張る姿が刺激になったという声も多かったですね。まさに、最初に設計したとおり「誰かと一緒に学ぶ」「誰かから学ぶ」ことが成果につながっていることがわかり、うれしく思っています。 三木:第2クールで任意ゼミの参加率が50%だったことは、少ないと捉える見方もありますが、私は非常に大きな成果だと感じています。新卒学部を実施していなければこうしたゼミ活動を自発的に実施してくれる可能性は高くないと思います。その点を踏まえると、半数の人が自らゼミに入って学ぶという行動をとったことは、素晴らしい成果だと思います。 ――自律的な学びを促進できたポイントは何だったのでしょうか。 三木:行動経済学の考え方を参考に、いかに自然と学びたくなる仕掛けをつくるかということを意識して設計していました。始めは事務局側がコミュニティーの参加の仕方など、手順を示して少しずつ主導権を渡していくことのほか、他のゼミや他のメンバーの学びの様子を見聞きできるようにすることも、学びの意欲を刺激したいと考えてのことです。 また入社6年目の若手である梅崎が学部長として推進したことも良かったと考えています。私のように年次の離れた人間が入ると、新入社員たちは本音を気軽に話せなくなってしまいます。少し上の先輩である梅崎がお兄さんのような立ち位置で関わっていたことで、彼らものびのびと活動ができたのではないでしょうか。