テレビ番組の特集で知った「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」に感銘。病気と闘っている日本の子どもたちを支えたい・・・【体験談】
2カ月程度の試行期間ののち、正式に病院のスタッフとして雇用される
――帰国後、横浜市立大学附属病院で、CLSとして働き始めました。 石塚 当時、横浜市医療局が「チャイルド・ライフ・スペシャリスト試行派遣事業」を行っていたんです。その事業に参加していた施設の1つ、横浜市立大学附属病院に応募し、採用されました。神奈川県内の大学病院では初、横浜市小児がん連携病院でも初のことでした。 CLSが多職種と連携して子どもを支援しているのはアメリカも日本も同じなのですが、アメリカの場合は日本と違って、CLS独自の部署があったり、CLSの介入の必要性を判断するアセスメントツールを導入している病院があったりします。そのあたりに違いを感じました。 また、私がアメリカでインターンシップを経験した病院の病室は、バス・トイレつきの個室がスタンダードで、大部屋はありませんでした。個室だから家族の面会は自由で、入院中の子どもがいつでも家族に会えるのはいいなと思いました。 でも、子どもたちがお互いにピアサポートになり、励まし合い、共感しあえるのは、同じような境遇の子どもたちが一緒に過ごす大部屋だからできること。 個室にも大部屋にも、それぞれにいいところがあるということも学びました。
酸素マスクにシールを貼り、手術室まではイラストを探しながら・・・。手術の不安を乗り越える
――たくさんの子どもたちのケアを行ってきた中で、印象に残っているエピソードを教えてください。 石塚 手術のために入院してきた、5歳のAくんのことをお話しします(※)。手術のときに使う麻酔用マスクに慣れるために、私とAくんとでマスクにシールでデコレーションして遊びました。Aくんはウルトラマンのシールを選んで、たくさん貼っていましたが、その最中にも、かなり緊張しているのが伝わってきました。 でも、完成したウルトラマンのマスクを口元に近づけて、「スーハ―スーハー」と深呼吸する練習をしているうちに、Aくんの気持ちに余裕が生まれたよう。「明日はばっちりだね!」って笑顔を見せてくれたんです。 そして、麻酔で眠るまでの間をどう過ごすか、一緒に作戦会議を開きました。Aくんは「このおもちゃを連れて行って、このビデオを見ながら寝るよ」って、いろいろと考えてくれて。Aくんなりに手術の怖さを乗り越えようとしているのがわかりました。 とはいえまだ5歳です。手術当日の朝、迎えに行ったら、「やっぱり嫌だな」って暗い顔をしていました。でも、必ず勇気を出してくれるはずと信じていたので、「一緒に作ったウルトラマンマスクでスーハ―って頑張ろうね!」と声をかけました。すると「わかった!行ってくるね!!」と、ママ・パパに元気にあいさつし、私の手をぎゅっと握り、手術室まで歩いていきました。 ――その子は2回目の手術もあったとか。 石塚 そうなんです。1回目の手術の半年後に、2回目の手術を受けることになりました。1回目で経験した痛みへの恐怖心があり、1回目より不安が強くなっていました。 少しでもいいから手術に対して前向きになってほしいと思い、手術室までの進路に、Aくんお気に入りのキャラクターのイラストを6枚貼り、イラストをすべて見つけると手術室にたどり着くようにしてみました。そして「手術室に行こう」ではなく、「キャラクター探しに出かけよう」と声をかけたんです。 すると、「キャラクターを探しに行ってくるね」と両親に明るい顔で報告し、私と一緒に手術室へ向かいました。 手術室に向かう廊下では、「ここにあった!」「こっちにもあった!」と大喜び。Aくんは次々にイラストを見つけながら、笑顔で手術室に入ってくれました。見つけたイラストは、退院時に家に持って帰ってくれたんですよ。