【新春座談】世界情勢不安の中「多様性のありかたをわが子にどう教える?」私たちの手で日本をよくするには
「どうして戦争が起きるの?どうすれば止められるの?」 もしも誰かに、特に子どもにこう聞かれたとき、あなたならはどう答えますか? たくさん考え得るその答えのうちの1つは、きっとこんな感じなのではないでしょうか。「お互いの多様性を認め合うことができる社会を作ることで、きっと止められるようになるよ」。 ですが、その「多様性(ダイバーシティ)」のある社会を作り、維持するために、私たちはいまこの瞬間何を始めればいいのでしょう? 経済の第一線から専門の異なる女性3名をお招きし、ご自身のフィールドから見えている「ダイバーシティのつくりかた」を伺いました。 【お話しいただいたのは】 経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長 相馬知子さん 三菱UFJフィナンシャル・グループ グループ・チーフ・サスティナビリティ・オフィサー(CSuO) 銭谷美幸さん 三菱UFJフィナンシャル・グループ 人事部部長 兼 ダイバーシティ推進室室長 上場庸江さん
最初の一歩は、「自分の中にもバイアスがあること」を認めること
――銭谷さんと上場さんは三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)で、相馬さんは経済産業省で、女性活躍推進を含む領域でそれぞれ活躍されています。女性管理職として第一線で働く一方で、皆さん育児もご経験されています。お子さんと接するときに「多様性(ダイバーシティ)」をどう教えてきましたか? 銭谷さん 私の子どもはもう成人を過ぎているので、過去のことを思い出してお話ししますね。 まず私は「自分の中にもバイアスが存在する」ことを認めるところから始めました。偏見や差別をするのはよくないと頭では理解しているつもりでも、無意識にしてしまっているかもしれない。まずはそれを認めました。 それを踏まえて、子どもに何か私の意見を伝えるときには「お母さんはこう思うけど、考え方はひとつじゃない。他にもいろいろな考え方がある、あなたはどう思う?」と話すことを注意して心がけました。 あとは、百聞は一見にしかずの言葉通り、実際に経験することを大事にしたかったので、様々な場に実際に連れて行くことや、旅行に出かけました。海外旅行の場合は先進国以外にも行きました。 ――すでに成人なさっているというと、小学生は15年ほど前でしょうか。当時からすでに、子どもを親の所有物として扱うことなく、一人の人格として尊重してきたということですよね。 銭谷さん はい。たとえば子どもが大きくなった時に「これまで知っている様な場所とは異なる地域で働きたい」と言ってきたとします。親としてはもちろん心配ですが、あくまで子どもは別人格。子どもの考えを尊重するように心がけました。そして「あなたが選ぶことに反対はしない。けれどあなたのことを大切に思っている」ということは必ず伝えてきました。 とはいえ、これはなかなか実践が難しいことで、親の側は強い自制心を問われます。想定外のことが起これば、もっと親として強く言うべきだったのでは?と悩んだことも多くあります。 「個性の尊重」はわかっていても、そう簡単に割り切れる話ではありません。 いっぽうで、実際に子どもが大きくなると、子どもから学ぶことも多くあります。特にデジタル系のアプリや若い世代の行動や思考方法など、さまざまなことを子どもから学び、気づかされることが多くあります。