【新春座談】世界情勢不安の中「多様性のありかたをわが子にどう教える?」私たちの手で日本をよくするには
多様性は「個人の内側」にも広がっていることを知ってほしい
――MUFGでダイバーシティ推進に取り組んでいる上場さんはいかがですか。 上場さん 私には16歳と10歳になる子どもがいます。「ダイバーシティ」と聞くと、性別、国籍、年齢といった属性の違いによる多様性を想起する人が多いと思いますが、「見えるダイバーシティ」だけでなく「見えないダイバーシティ」もありますし、さらには「ひとりの中に多様性を備える」ことも大事だと言われています。 ものの見方や考え方、理解の仕方、判断・決断の仕方などは「見えないダイバーシティ」ですが、認知が多様であるという意味の「コグニティブダイバーシティ」と言われその多様性も組織において重要ですし、また、一人ひとりの中に多様な視点を持っていること「イントラパーソナルダイバーシティ」も大事な観点だと思います。 自分の中に多様性を備えていないと、他者の多様性は理解できない、ということ。 逆に、同じ年代の同じ性別、一見多様ではないチームでも、それぞれがもつ経験やスキル、認識の仕方など、内面の多様性があれば、そこから「化学反応」を起こして生まれる発見や知恵などもイノベーションがあるということです。 子どもは言葉の理解はできないかもしれませんが、「立場違えば見方が違う、人の見方を理解できるようになるようにいろいろな経験をしよう。」と伝えています。ただ、学童期は、まずは自分自身がどのように感じるか、考えるかを持って欲しいとは思っています。 ――内外どちらへも広がる、本来の意味での多様性を、そのままお子さんにも教えているんですね。育児方針は何を大事にしていますか? 上場さん はい。意識しないとなかなかできないことですが、子どもに向き合う時にまずは「そうだね」と受け入れ、その後で、何か伝えたいことがあれば「でもお母さんはこう思う」と付け足すように気を付けています。”YES, but”の考え方ですね。そうするつもりはないのですが、相手が聞いた時に否定と取られるような伝え方をして失敗したことは何度もあります。 あとは、自分の経験からですが、得意なことや夢中になれることに関連して、そこから成長とともに自分にフィットする領域を見つけてくれれば、と思っています。やはり得意や夢中がベースにあると、努力が楽しみになります。 ――夢中になれることを探す、となると、さまざまな習いごとにトライしたり? 上場さん 多様な経験を積ませたいと、習いごとに限らずいろいろな場に意識して連れていきました。習い事に関しては、本人が辞めたいと言いこれ以上続けても嫌々だなと思ったら辞めさせましたし、逆に、辞めたいと言っているけれども、私からみたら得意に思えるものを続けさせた結果、違うステージに達すことができたこともあります。 そんな時に「あの時辞めていたらこれはできなかったね。こんなこともできるようになったね」と成長を伝えています。一時の感情にとらわれすぎないことに気付いてくれたらと思っています、伝わっているかは分かりませんが。また、子ども自身は自分の成長には気付きませんので、気付いた都度その違いを言葉にするようにはしています。 相馬さん 上場さんの話を聞いて思ったんですが、子どもだけでなく自分もリスペクトすることって大事ですよね。一般的に女性は男性と比べて自己評価が低いと言われています。男性と比べて「私なんて」と思いがちで。 昔は一つの会社に入れば同じ会社で働き続けるケースが多かったと思いますが、今は多様なキャリアの積み方があり、いろいろな経験をすることができます。「私はこんな経験をしてきたからこんなことができる」と自分自身をリスペクトすることが大切だと思っています。