【新春座談】世界情勢不安の中「多様性のありかたをわが子にどう教える?」私たちの手で日本をよくするには
「性差を強調せずに育てる」ことで自分自身の思わぬバイアスにも気づく
――相馬さんはみなさんの中では一番小さい、未就学児のお子さんをお持ちですね。 相馬さん はい。男女二人の保育園児を抱えるワーママです。男児と女児なので、性差なく公平に育てることを意識しています。 自分自身の発言にはかなり気をつけているつもりですが、それでも子どもたちは「男の子だから青だよね、女の子だからピンクだよね」といったことを、どこかから覚えてきます。 ――気づかないうちに自分でも「そんなものだ」と思っていることもありますよね。 相馬さん 先日、息子が同世代の子どもを見て「外国人」と言っていました。昔ならば聞き流していた発言かもしれませんが、ここでハタと、「その子どもは生まれも育ちも日本かもしれないし、戸籍は日本かもしれない」と気づきます。子ども本人の気持ちを否定せずに、外からでは分からない多様性をどう伝えよう?と考える瞬間ですよね。 私はそんな時はまず否定せずに「なぜそう思ったのか」を聞くようにしています。もちろん、まだ幼いですし、この声がけで何かがすぐ変わることはないと思います。それでも、少しでも心の中に「なぜ?」が残ってくれればいいなと思って接しています。
「辞めないでいる」ことも意外に大事。現在のキャリアの源流は?
――お三方とも出産、育児と仕事を並行し、変わらず第一線で活躍されています。最初から現在のような責任のあるポジションへ進んでいくキャリアを意識していましたか? 相馬さん どうなりたい、とは具体的には考えていませんでしたが、唯一、働き続けるということは自分の中で決めていました。あとは自分が面白いと思う仕事をしていけば、その先に責任ある仕事があるんだろうなというイメージはありましたね。 上場さん 私も相馬さんと一緒で、「辞めたら成長はなくおもしろくない」と思って続けていました。「辞めるのはいつでもできるから、ギリギリまで頑張って。」とアドバイスされたこともあります。悩むことに時間を使ってしまう前にやってみることが大事で、そうすることで展開が変わってくると(笑)。 振り返ってみると、今まで続けてこられたのは、お客さまや上司などが時々かけてくれた言葉のおかげだと思っています。人は言葉でできていると思っていますし、大事な場面では言葉にして伝えることは大事ですね。 Facebookの最高執行責任者であるシェリル・サンドバーグの著書’Lean-in’を読んだときには、彼女ですら仕事と家庭とどう折り合いをつけるか悩み、幼い子どもの多くの時間を他者に任せることの罪悪感をもつこともあったのだから、自分が悩んで当たり前と、どこかふっきれたことも思い出します(笑)。 銭谷さん 私の場合、所属している会社を成長させたいと考えた時に、自分が決定できる部署や立場にいることが大事であると考えていました。未経験のことに挑戦することはもちろん大変でしたが、その立場にいるからこそ見える景色もあるし、また高い満足度と達成感を得る経験もたくさんできました。 先ほど相馬さんもおっしゃっていましたが、インポスター症候群といって、女性は男性に比べて自己評価が低い傾向にあります。 たとえば男性なら自信が半分しかなくても「やってみよう!」と思うことに対して、女性は8割の自信がないと手を上げない。それが女性のバイアスだとすると、とてももったいないことだし、今のような不確実な世の中で確実なことしかやらないのは残念なことでもあります。 チャンスは平等にはきません。だからこそチャンスが来た時にトライしてみよう、と行動に移せる社会であればいいな、と思っています。 ――今日はお話をありがとうございます。皆さんのご自身の経験に基づくこれらのアドバイスを取り入れて、さっそく多様性を豊かに構築できるようマインドセットの切り替えに努力してみたいと思います!
ライター 皆川知子