散乱した部屋に亡き妻の骨壺残し… 街にあふれる「孤独死予備軍」 「薄縁」時代㊥
薄暗い廊下を抜け、2階一室の玄関ドアを開けて踏み入れた部屋。狭い空間を囲むように大型家具が置かれ、机や床には雑誌、書類や衣類などが散乱している。その隅に、布袋に収まった骨壺が無造作に置かれていた。 【写真2枚】ミニチュアで再現された孤独死の現場 8月中旬、家族代行を担う一般社団法人「LMN」(東京都渋谷区)代表理事の遠藤英樹さん(57)は故人の遺品整理のため、神奈川県内の古びたアパートを訪れた。 部屋の主は80代男性。もともと、すし職人だったが、高齢で仕事ができなくなると困窮し、生活保護を受けていた。 がんを患い、寝たきりとなってからはヘルパーらが定期的に様子を見に来ていたが、同月上旬、布団の上で冷たくなっているのが見つかった。 遠藤さんはケアマネジャーから相談を受け、男性との話し合いの上、亡くなった後の対応を任せられることになっていた。 あふれかえる物をかき分けて今後の手続きに必要な物や貴重品を探し、段ボール箱に収めていく。。部屋にあった骨壺は、亡くなった妻のものという。 「妻は10年以上前に他界し、親族とは音信不通になっていたようだ」(遠藤さん)。誰にも看取られず、男性は最期を迎えた。 ■高齢者の「身元保証人」に 遠藤さんの下には今、高齢の親を持つ子供たちからの相談とともに、身寄りのない高齢者を抱えた医療・介護現場からの問い合わせも急増している。 「入院患者を介護施設に移したいが、身元保証人となる家族がおらず困っている」「在宅や施設で介護する高齢者の死後の対応を話し合える家族がいない」。そんな訴えを聞き取り、高齢者の身元保証人となって終末期を支えていく。担う仕事は施設の入所手続き、死後の葬儀手配や納骨、遺品整理など多岐に渡る。 一方、周囲の支援の手が届いていない高齢者を目にすることも少なくないという。 「多いのは非正規雇用で働いてきて、貯蓄はゼロ、入ってくるわずかな年金で生活し、施設に入ることもできないといった人たち。家族や周囲との関わりも薄く、独居生活の中で孤立を深め、『孤独死予備軍』ともいえる存在になっている」(遠藤さん) ■発見まで1カ月超のケースも