「めんどくさい仕事はしない。出社もしたくない」サイボウズ代表取締役・青野慶久さんに聞く『kintone』を生んだ〝ものぐさ習慣〟
ノーコードツール『kintone』など、業務を効率化するクラウドソフトで知られるサイボウズ。社長・青野慶久氏は、まさに「効率化のエキスパート」といった人物で、彼が持つ独特の習慣にはこれまでの半生における〝学び〟が詰まっていた。
世の中で黙認されている「ムダ」を飲み込まない
──ご自身に成功をもたらした「習慣」を教えてください。 ムダな仕事があると、いかにそれをやらずに済ませるか考えます。電話は使いたくない、メールも書きたくない、できれば会社にも行きたくない(笑)。 食事も手早く取りたいから、我が家の近所にある牛丼屋のヘビーローテーション率はヤバいです。お昼も、パッと食べられる栄養食を家から持ってきて食べています。これなら買いに行く時間もかかりません。 ──タイムパフォーマンス、高いですね。 ええ。しかもこの効率化へのこだわりが『kintone』開発のきっかけにもなっているんですよ。 新卒で大手のメーカーに就職したんですが「課長いますか? 資料を送ってほしいんですが」といった電話がかかってきて、メモを残したらまた同じ用件の電話がかかってきた。 「この生産性がない仕事、何とかならないの? 課長のスケジュールや資料が共有されていればいいだけじゃん!」と思っていました。 だからインターネットが普及し始めた時、いち早く「これで全員が全員の予定を把握できて資料も共有できるソフトが作れる!」と気づけたんです。 ──なるほど。しかし同じような思いや気づきがあっても、起業できる方は少ないと思うんですが。 世の中で「当たり前」とされていることに飲み込まれず、自分が感じることを大切にしてきたと思います。そうすれば人に我慢を強いているものはなくなります。 もちろん、新しい道具やソフトをなかなか試さない人もいますが、最終的には合理的で便利なものが普及します。私たち、子供の頃からそういう進化を見てきているじゃないですか。だから「まず自分が欲しいものを創ろう」と、大きな不安はなく起業できました。 ■kintone 2011年にサイボウズが提供を開始した、クラウド型の業務改善プラットフォーム。プログラム開発の知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどのシンプルな操作で、日報やスケジュール管理、顧客管理などの業務アプリを作成・運用できる。登録した情報は複数人で共有でき、目的に応じてデータを抽出し集計することも可能だ。 後編では、青野さんの会社で働くメンバーとの接し方や、健康面での習慣などを教えてもらった。 サイボウズ代表取締役 青野慶久(あおの・よしひさ) 1971年、愛媛県生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科を卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社し、97年にサイボウズを設立。05年に代表取締役社長に就任(現任)。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)などがある。 取材・文/夏目幸明 撮影/浦 将志