本屋が消えゆく時代…大阪に「新たな書店」誕生、海外客もターゲットにした「TSUTAYA」の挑戦
全国に1000店舗以上を展開する「TSUTAYA」。創業以来、書店やCDなどのレンタル業界をけん引し、時代の変化とともに多様なスタイルの店舗が登場している。2024年12月には「TSUTAYA EBISUBASHI」(大阪市中央区)内に「大阪IP書店」が開店、この店づくりに込めた思いを訊いた。 【写真】店内は…思ってた書店と違った! ■ エンタメグッズが充実のIP書店 「大阪IP書店」に足を踏み入れると、店名は「書店」ながらもアニメや漫画、VTuverなどのグッズがずらり。コミックも販売されているが、IP(知的財産)エンタメ約30コンテンツのグッズ類・約2万点がメインで、その半数以上が「IP書店」限定商品となっている。 1号店は「好きなもので、世界をつくれ。」をテーマに、今春にリニューアルした「SHIBUYA TSUTAYA 」(東京都渋谷区)内にオープン。全館を通して「ポケモンカードゲーム公認ラウンジ」、アイドルやアーティストに特化した「エンタメワンダーランド」など、趣味を追求できるフロアが充実し、なかでも6階の1フロアで展開する「IP書店」は様々なトレンドに敏感な若年層に好評という。 2号店が入る「TSUTAYA EBISUBASHI」もかつてのレンタルサービス終了後は、ブックカフェを拡大し、コスメ売場を設けるなど、時代とともに変化。道頓堀の観光スポット・戎橋近くという場所柄、「IP書店」は2025年の万博開催も見据え、将来的に来店客の半数は日本のエンタメに興味をもつ海外客になることが予想されるという。 ■ わくわく感のある…新たな「書店」を提案 年々、スマホで手軽に楽しめるデジタルコンテンツが充実し、書店が減少している昨今。運営会社「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」のIP書店プロデューサー・栗俣力也さんは「今の書店はどこに行っても同じものが少量並んでいる印象で、わくわく感が減ってしまったなと。昔の本屋はたくさん積んであると『ここのおすすめなんだ』と出合いが多く、チェーン店でも地域によって全く違うので、そのおもしろさが実店舗の1番の醍醐味な気がしますね」とコメント。 今回の「書店」を冠した新店について「その頃の書店を今の形で再現するとどうなるんだろう、というのがこの『IP書店』を作った根本にあって。自分の子どもの頃のわくわく感を今の若い人たちにも知ってほしいなという思いがあります」と、大阪限定品や漫画の魅力を墨絵で伝えるグッズなど、新たなIPと出合える実店舗への思いを明かした。 また、同社は日本初のブックカフェを2003年に東京・六本木に開業するなど、いち早く「空間価値」を提案。今秋には「TSUTAYA 香里園店」(大阪府寝屋川市)がブックカフェとジム、シェアラウンジを備えた日本初の複合型店舗としてリニューアルした。 広報部の東佑香さんは「時代に合わせて新しいものを提案していく企画会社というのが原点。ずっと何かにこだわって売り続けるより、その時代で必要とされる体験や空間を作っていくのが軸になっています」と話し、「ものを売るというより、そこから広がる世界を売っている」感覚という。 「大阪IP書店」の場所は「TSUTAYA EBISUBASHI」地下1階、営業は朝10時~夜10時。 取材・文・写真/塩屋薫