「内密出産」3年間で38人、9割以上が県外在住…熊本市の慈恵病院「各都道府県に必要だ」
熊本市の慈恵病院は28日、病院の担当者のみに身元を明かす「内密出産」について、今年1~11月に新たに17人が利用したと発表した。約1年間での利用者数としては最多で、2021年12月の最初の出産から約3年間で38人となった。蓮田健理事長は、全体の9割以上が県外在住だったことに触れ、「各都道府県に内密出産ができる場所が必要だ」と訴えた。 【写真】蓮田理事長
初事例から3年を前に蓮田理事長が記者会見し、今年初めて熊本県内在住者が利用したことや、新生児が発病し、高次医療機関を受診したが生後5日で肺炎で亡くなった事例などを説明した。初の死亡例となる。
約3年間で内密出産を利用した38人の内訳は県内3人、県外35人で、最も遠方では北海道からの利用があった。内密出産を選んだ理由は「母親に知られたくない」が最多の17人だった。
38人の約4割にあたる14人が後に匿名を撤回した。内訳は実親や親族、里親らによる養育を希望する女性が8人、特別養子縁組の希望者が6人。残る24人は匿名を維持している。
このほか、内密出産の相談を受けたものの、下半身にまひがあるケースの出産対応の経験がなかったことなどから受け入れを見送った女性が、妊娠中に胎児を亡くし、自らも自死した事例も明らかにした。蓮田理事長は「内密出産を選ぶのには相当な事情があり、人生をかけた決断。日本に慈恵病院しかなく、今回の件を戒めに、全力で希望者を受け入れていく」と話した。