東京国立博物館『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』レポ。縄文の土製品から、生と死に思いをはせる
東京国立博物館で、美術家・内藤礼の個展『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』が開催されている。 【画像】展示会場の模様 「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに制作している内藤が、収蔵品をはじめ建築空間、そして歴史に向き合った本展。150年の歴史を持つ東京国立博物館で、新作をはじめ、約100点が公開された。 報道陣向けの内覧会で内藤は「これまでも持ち続けていた問いは、東博という場であったからこそ深く感じ、考えることができたと思うのです」と語った。 会期は9月23日まで。内覧会での内藤の言葉を交えながら、本展をレポートする。
収蔵品『土版』との出会いから始まった
「誰だろう この地上に生きた いのちと 母というはざま そして ここには 生の内と外にゆきわたる 何かがあった みなが はなつ 声 みちて そうおもうほど わたしは生だった ―内藤礼 - (『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』チラシより引用)」 内藤は1961年広島県生まれで、現在は東京を拠点に活動している。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに制作しており、その作品制作において「生と死」は分別できないものとして問われているという。 150年の歴史を持つ東京国立博物館には、約12万件の収蔵品がある。報道陣向けに開かれた内覧会で内藤は、本展は、それらの収蔵品のひとつである縄文時代の『土版』との出会いから始まったと語った。 内藤が作品について考えていると、その『土版』と内藤の作品『死者のための枕』、そして「それらを成り立たせている何か」から「生まれておいで、生きておいで」という呼びかけを感じとったのだという。内藤は、「その声は生の外から、こちら生の内に向けて送られている力であり、慈悲であると私は思いました」と語った。 本展では『土版』のほかにも、内藤の作品に内包されるようなかたちで、同館の収蔵品が展示されている。例えば注文主など、つくり手以外の意図が制作に大きく関与する以前につくられた、縄文時代の土製品が中心に選ばれているという。 本展を担当した東京国立博物館 学芸企画部 上席研究員・広報室長の鬼頭智美は、「今回内藤が東京国立博物館とその収蔵品、建築空間、歴史と向き合って生まれた作品を、新作を含め、約100点公開」と説明した。