元日本代表、廣山望が語る新生バルサへの期待
――バルセロナは昨シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝でバイエルンに屈し、さらに24日にミュンヘンで行われた親善試合でもバイエルンに0対2で負けています。 「親善試合の敗戦はそんなに深刻じゃない。チャンピオンズリーグでバイエルンに負けましたけど、私はバルサらしいと思いました。負けることに慣れていないだけです。他のチームが持っていないものを、バルサは出せる。ここが魅力です。バイエルンに勝つために、フットボールをしているのではない。お互いによさを出し合って負けた時は得るものは多いけど、よさを消し合って負けた時には得るものは少ない。バルセロナらしさを失わず、采配の部分で監督は監督の深みを出してほしい。メッシやネイマールの個を生かすような、大一番になった時でも彼ららしいプレーができるような環境を作ってほしいですね」 ――ネイマールの名前が出ましたが、ブラジル代表の背番号10の加入をどう見ていますか。 「個人的には、ネイマールとメッシがどのような化学反応を起こすかを見てみたい。脅威がメッシだけじゃなくなりますから、バルサは変わります。ネイマールとメッシは噛み合わなくてもいいんです。武器が2つに増えたと思えばいい。お互いのよさを消し合わなければいいんです。2人が持つ脅威が、自然と出ればいい。メッシの脅威は、ボールを取れそうで取れない点なんです。相手のDFが勝手に飛び込んできてくれるから、守備のバランスが崩れるんです。だから、相手に引いて守られると厳しくなる」 ――ネイマールの脅威とは何でしょうか。 「ネイマールは自分から崩せるんです。スピードをコントロールすることもできる。だから今シーズンのバルサは、局地的な場面でのスピードが上がると思います。サイドチェンジで数的有利な状況を作ってからカウンターといった具合に、スピードの緩急で相手のバランスを崩す場面が増えると思います。誰も持っていないものをネイマールのプレーで見られる、という期待感がありますよね」 ――新監督の就任会見では、「メッシとネイマールのコンビネーションがうまくいかなければ責任を取る」といったニュアンスの発言も飛び出しました。 「彼らの才能をリスペクトしているからでしょうね。監督で変わるようなことじゃないんです。武器が増えるんです。今まではメッシに集中できた相手のDFが、ネイマールも気にしなくちゃいけないんですよ」 ――新監督のもと、ネイマールはどこに配されるでしょうか。システムは変わりそうですか。 「左サイドかもしれないし、トップ下もあるかもしれない。トップ下を置くとこれまでの4‐3‐3はできませんけど、4‐2‐3‐1に変えれば可能になる。どちらになるにせよ、本当に楽しみです」 バルセロナの街では、ネイマールの名前が刻まれた青と臙脂(えんじ)のユニフォームを着ている子供たちをよく見かける。新シーズンは8月17日、ホームのカンプ・ノウにレバンテを迎える一戦から幕を開ける。カタルーニャの誰もが、ヘラルド・マルティーノに率いられる新生バルサの胎動を心待ちにしている。 (文責・吉野正人/バルセロナ在住スポーツライター)