「素肌にジャケットに裸足」柄本佑が語る森山大道、荒木経惟の息づかい
NHK大河ドラマ『光る君へ』において、吉高由里子扮する主人公・まひろの「ソウルメイト」で、物語を書く意味を与えてくれた人・藤原道長を演じ、視聴者を悩殺したり、笑わせたり、ときに呆れさせたり、母性本能をくすぐったりと、翻弄し続けてきた俳優・柄本佑さん。 【画像】道長に尾高…沼る人が多発する柄本佑が持つ男の色気とは? そんな彼が人生初のフォトブックを発売する。題して『柄本佑1stフォトブック「1(いち)」』(講談社刊)。 と言っても、よくあるイケメン写真集とは一線を画したものだ。なにしろ撮影は柄本さん本人たっての希望により、森山大道さん、荒木経惟さんという二大巨匠が撮りおろし。被写体である本人が衣装も準備、撮影場所にもこだわり、「責任編集」を手掛けている。また、家族や学生時代、趣味、日常のことなどについて語った60P超えの“私的マガジン”なるものも収録……と聞くと、「なるほど、そうきたか」と思う人も多いだろう。なぜなら、そうした思考や嗜好、表現方法にこそ、柄本佑という人間の色気が凝縮されている気がするからだ。 そこで柄本佑さんにインタビューを決行し、前編では、クライマックスとなる『光る君へ』のことや、色っぽいと話題の自身についての意見を伺った。後編では。柄本佑を作り上げた原点「1(いち)」を探っていく。
学生時代から憧れていたふたりの写真家
『柄本佑1stフォトブック「1(いち)」』は2022年末から始動。ドラマや映画撮影の合間を縫って時間をかけ取り組み、足掛け約2年で形になったものだが、経緯について柄本さんはこう説明する。 「最初どなたか撮ってほしい写真家さんとかいらっしゃいますかと聞かれて、無責任に『森山大道さんとか荒木経惟さんとかに撮ってもらえたら良いですね』みたいな感じで言ったんですが、本当に実現していただいて。実際に写真を撮ってもらったからには、しっかり良いものにしなくてはということで、今回“綴じない”フォトブックにした次第です」 実は撮影の交渉時には、それがどういう形になるのか決まっていなかった。そんな無謀にも思える思いつきの原点には、柄本さんの専門学校生時代から森山・荒木両氏の写真への憧れがあったと言う。 「18~19歳の頃にお二人の写真に出会いまして。それまでももちろん知ってはいましたが、映像と写真の専門学校に行き、フィルムカメラを買って、写真をモノクロで撮ったり現像したりしているうちに、どんどん写真が好きになってしまって。そんな中、大道さんと荒木さんのいろいろな本を読んだり、写真を見たりするうち、魅了されていきました。それで、もともと映像のほうに行く予定で学校に入ったのに、2年時にどちらかを専攻する段階で写真のほうに行ったんですよ」 取材当日。『光る君へ』の剃髪時より少し伸びた坊主刈りで取材に現われた柄本さんは、すぐ窓の外に目を向け、26階の展望から冬の澄んだ空に沈みかけた夕日とくっきり見える富士山の輪郭に「富士山綺麗だなあ」と嘆息していた。「光の具合がいいよね」という視線は俳優の姿ではなく、写真を志していた頃の姿に18~19歳の面影が重なる。