「素肌にジャケットに裸足」柄本佑が語る森山大道、荒木経惟の息づかい
撮影では母から譲り受けたコートも登場
改めて森山・荒木両氏の写真の魅力を尋ねると、「こればっかりが言葉にするのが難しい……」と言いつつも、止まらなくなる。 「大道さんの写真には、日本じゃないみたいな空気感があって、スタイリッシュで乱暴で、劇的瞬間があるんですよね。その一方で、荒木さんの写真は繊細で、ガラスのような壊れやすさがある印象で。荒木さんの写真を見ると、愛の深さや孤独が被写体との関係性の中から感じられるんです」 荒木氏による撮影は、ちょうど仕事がオフだった時期に行われた。スタジオで、母親(角替和枝)から譲り受けたコートを着るなど、面白いシチュエーションで撮影をしてもらったと言う。 「とにかくフィギュア(姿形)そのまんまにしておけるものは、そのまんまで撮ろう」ということから、衣装を考える中で、当初はTシャツにジーパン1本、スニーカーというラフな衣装が検討された。しかし、そこから「物語」が付加されていく過程が面白い。 「この母ちゃんからもらったコートは、なかなか着るタイミングがなかったんです。今回、荒木さんの撮影があるときに衣装として使わせていただくのは良いかもしれないと思い、撮影に持って行って。荒木さんにそういう経緯などもお話しさせていただいて、ある種、因果関係みたいなストーリーも含まれたような写真になっているんですね」 また、荒木氏の撮影の2つ目のポーズも私物だという。 「10年ぐらい前になぜか衝動買いして、『これ一体いつ着るんだ?』と思っていたジャケットを持って行きました」 衣装はあらかじめ見せ打ち合わせをしていたが、そこからの足し引きやシチュエーションは荒木との対話の中で生まれていく。“素肌にジャケットに裸足”という2ポーズめのスタイリングも、そうして出来上がった。 「2人きりの撮影で、途中でメイクさんも入らず、むしろ荒木さんが髪の毛をバーッと崩して、そのまま撮ってくれたりして。服も荒木さんが整えてくれました。荒木さんと僕の対話みたいなことを撮っていく感じで、それはすごい刺激だったし、楽しかったですね。そういう中でお互いに理解が深まって、合致して、一つになっていく過程を過ごさせてもらいました。逆に先にイメージを決めちゃうと、どうしても狭いものになっちゃうような気がしていたんです」