「素肌にジャケットに裸足」柄本佑が語る森山大道、荒木経惟の息づかい
棚からぼた餅も気負わない、しなやかさ
母親のおさがりのコートも、衝動買いしたジャケットも、中高時代の服装も、みんなちょっとずつつながっている。一見無頓着そうで、そこにあるのは、一瞬のひらめきや出会いを大事にする感性と深い愛情ではないか。柄本の芝居に惹かれ、心を揺さぶられてきた種のようなものが、このフォトブックに詰まっている気がする。 今回自身のフォトブックに、自身のルーツや、衣装との物語を詰め込んでいるように、柄本佑を語る上で「ロマンチスト」という言葉はたぶん欠かせない。そんな彼が大事にしている言葉があると言う。 「僕が出会って大事にしているのは、(俳優の)石倉三郎さんがおっしゃった言葉で。それは『運という言葉がある。運も実力のうちだって言うけど、それは全くもってそうである』『運っていうのは、運ぶと書く。要は、自分が行きたいところがあって、どこに行ったら運んでくれるかな、この人だったら運んでくれそうだなといったことを見極める目が必要だ』ということなんですが、まったくその通りだな、と。 棚からぼた餅も、どの棚の前に立っていたらぼた餅が落ちてくるかぐらいの先見の明を持っておけ、と。そういう意味では、目を鍛えることもすごく大事だなと思うんですね」 自分が行きたい場所に運んでくれる人・モノを見極めつつ、流れに身を任せ、わからないことをその都度楽しむ――柄本佑のそんなしなやかな生き方に私たちは人間としての色気を感じてしまうのかもしれない。 柄本佑 Tasuku Emoto 東京都出身。2001年、黒木和雄監督『美しい夏キリシマ』のオーディションに合格し、’03 年、同作の康夫役で主演デビュー。第77回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第13 回日本映画批評家大賞 新人賞を受賞。’18 年、三宅唱監督『きみの鳥はうたえる』で第73回毎日映画コンクール男優主演賞、『素敵なダイナマイトスキャンダル』で第28 回日本映画批評家大賞の主演男優賞、両作と『ポルトの恋人たち 時の記憶』により第 92 回キネマ旬報ベスト・ テン主演男優賞を受賞。’22 年の『ハケンアニメ!』で第44回ヨコハマ映画祭助演男優賞などを受賞。近年の代表作に、ドラマ『空白を満たしなさい』『初恋の悪魔』(’22 年)、映画『シン・仮面ライダー』『花腐し』('23 年)などに出演。’23 年 1月、 自身が監督を務めた『ムーンライト下落合』『約束』『フランスにいる』の3 本からなる短編集『ippo』を発表。’24 年、大河ドラマ『光る君へ』(NHK)では、藤原道長を演じ話題に。’25年2月には、アニメ映画『野生の島のロズ』、映画『ゆきてかへらぬ』などの公開が控えている。 ヘアメイク/星野加奈子 スタイリスト/林道雄 【衣装協力】ジョルジオ アルマーニ ︎TEL03-6274-7070
田幸 和歌子(フリーランスライター)