ニューヨーク の都市再開発に見る、価値ある商業エリアの生み出しかた。ロックフェラーセンターはどう変わったのか
ピアススタジオのスタッズ(Studs)は、急速な拡大後、2024年の幕開けを飾るための新たな拠点を探していた。同社はすでにニューヨーク市のウィリアムズバーグ、ハドソンヤーズ、フラットアイアン、アッパーイーストサイド、ノリータに店舗を保有していた。しかし、「まだ中心部であるミッドタウンに、観光客やこの地域で働く地元の人々に向けた店舗がなかった」と共同創設者でCEOを務めるアンナ・ハルマン氏は米モダンリテールに語った。 スタッズは最終的に、最近改修されたばかりのロックフェラーセンター(Rockefeller Center)を新しい拠点に選んだ。新店舗は3月1日にオープンし、近年ミッドタウンに移転した多くの企業に名を連ねた。 ミッドタウンは長きにわたってラグジュアリーブランドの拠点だったが、今ではあらゆる分野のブランドがこのエリアに出店しはじめている。シチズン(Citizen)やスワロフスキー(Swarovski)は昨年12月、5番街(Fifth Avenue)に旗艦店をオープンした。アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は7月に、旗艦店を5番街のさらに大きな店舗に移転した。メイドウェル(Madewell)は昨年夏、5番街の旗艦店をデニムアトリエという新コンセプトを持つ店舗にリニューアルした。 小売業者は何年にもわたり、ニューヨーク市のイット(魅力的)なエリアに出店しようと集まってきた。パンデミック以前も、またその回復期である最初の数年も、ソーホーやノリータがその頂点に君臨し、ヴァレンティノ(Valentino)、ウイルソンスポーティンググッズ(Wilson’s Sporting Goods)、ヴオリ(Vuori)などがこのエリアに出店した。ウィリアムズバーグもまた、シックなカフェや中古品店、ウォーターフロントの景観のおかげでD2Cビジネスのあいだで評判が高かった。 現在、潮流は変化しつつあり、高級ブランドだけでなくあらゆる分野と規模のブランドがミッドタウン進出をめざしている。その大きな理由は、6平方ブロックにまたがるロックフェラーセンターの大規模改修によるものだ。全体として、小売業界最大の市場のひとつにしてビジネスの主な中心地でもあるニューヨーク市が、パンデミック以後の回復を続けていることは明るい兆候である。