なぜ女子マラソンで日本勢はメダルに手が届かなかったのか…ケニア勢とのスピード差と直前の時間変更など振り回された1年
5km18分を超えるスローペースで始まったレースは徐々にペースアップしていき、25km地点でトップ集団は11人に絞られた。 29km付近で灼熱のドーハ世界選手権を制したチェプンゲティッチ(ケニア)が遅れるなど、トップ集団は30km通過時で8人まで削られた。そのなかに一山はいた。しかし、33km付近から苦しくなる。トップ集団から振り落とされると、一時は9位まで順位を落としたが、終盤は踏ん張った。最後は2時間30分13秒の8位で、両手を広げてゴールに飛び込んだ。 「9番よりは8番の方がうれしかったので、最後は笑顔で終わろうと思って、手をあげて走りました。世界の選手と一緒に走ってみて、世界の人たちは暑くても強いなと思いました。もうこれ以上頑張れないというくらい走ってきたので、今日は勝てなかったですけど、悔いはありません」 一山はメダルに届かなかったものの、日本人選手ではアテネ五輪以来17年ぶりの入賞を果たした。 優勝争いはケニア勢だった。35kmまでの5kmを16分54秒にペースアップすると、40kmまでの5kmを17分01秒でカバー。他国の選手を寄せ付けなかった。ジェプチルチルが2時間14分04秒の世界記録を保持するコスゲイを抑えて、2時間27分20秒で金メダルを獲得した。 ジェプチルチルと一山のタイム差は2分53秒だったが、その実力差は小さくない。ジェプチルチルは女子単独ハーフマラソンで1時間5分16秒の世界記録を持つ。一山は今回のコース部分を使用した5月5日の札幌マラソンフェスティバル・ハーフマラソンで1時間8分28秒の自己ベストで走っているが、ハーフで3分以上のタイム差があるからだ。 暑さの戦いもある世界大会は序盤から高速レースになることはほとんどない。しかし、終盤の勝負どころでは「スピード持久力」がものをいう。世界と日本の差はスピードの部分が大きい。ハーフマラソンの日本記録は新谷仁美が持つ1時間6分38秒だが、マラソンで世界トップと互角に戦うためにはハーフマラソンで1時間5分台のスピードを身につける必要があるだろう。 前日の夜に急遽、スタート時間が1時間前倒しになった問題も選手たちに影響を与えた。