「第三セクター等」の収益(売上高)が過去最高 三セク等の4割が経常赤字、変わらぬ“補助金頼り”
債務超過の法人数は前々年度から7法人減、佐賀県は唯一ゼロ
2022年度の債務超過に陥った三セク等は263法人で、前々年度(270法人)から7法人減少した。債務超過額は総額1,335億4,694万円で、前々年度(1,425億9,470万円)から6.3%減少した。三セク等の整理が進んだほか、コロナ禍での財務内容の悪化に歯止めがかかり、債務超過に陥った法人の状況が若干改善した。 内訳は、三セクが230法人(前々年度233法人)、地方三公社が30法人(前々年度同数) 、地方独立行政法人が3法人(同7法人)だった。 債務超過額の平均は、地方独立行政法人が30億4,879万円、地方三公社が15億5,233万円、三セクが3億3,839万円で、法人数と全く逆の順となった。債務超過に陥った地方独立行政法人の3法人は、地域の基幹的な医療機関だった。地域医療で重要な役割を果たすが、コロナ禍での収入減や人口減で累積赤字を抱えている。 また、地方三公社30法人のうち、土地開発公社が24法人と8割(構成比80.0%)を占める。宅地開発や企業誘致用地の先行取得も、開発が進まず長期保有の「塩漬け」土地を抱え込んでいる。 都道府県別では、債務超過に陥った三セク等が最も多いのは、長野県の15法人。次いで、北海道13法人、秋田県12法人、岩手県と山形県、新潟県が各11法人、富山県と広島県、鹿児島県が各10法人で続く。 一方、佐賀県は47都道府県で唯一、債務超過の三セク等がなかった(前々年度1法人)。このほか、埼玉県(同2法人)と神奈川県(同1法人)が各1法人だった。
地方公共団体からの借入金は3兆5,535億円、損失補償・債務保証は2兆1,443億円
2022年度で、地方公共団体から借入金を導入する三セク等は679法人(構成比11.3%)で、1割を占めた。借入残高は3兆5,535億円に達する。借入残高は前々年度(3兆6,826億円)から1,291億円減少(3.5%減)したが、減少幅は前々年度(7.1%減)の半分以下にとどまり、依然として地方公共団体への資金的な依存度は高い。 借入金とは別に、地方公共団体が金融機関などに損失補償や債務保証を設定する三セク等は438法人(構成比7.3%)で、残高は2兆1,443億円(前々年度比11.7%減)に達する。 三セク等が破綻や清算などに追い込まれた場合、地方自治体が多額の不良債権や保証債務を負うリスクをはらんでいる。地方公共団体のバックアップを背景に、金融機関のガバナンスが薄れ、本来は存続が困難な法人の整理・淘汰が先送りされている可能性も否めない。 ◇ ◇ ◇ 政府は、2009年施行の「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づき、2009年度から2013年度までの間に「第三セクター等の抜本的改革」を推進した。2014年度以降も「第三セクター等の経営健全化等に関する指針」を策定し、三セク等の効率化・経営健全化等への取り組みを求めてきた。 その結果、三セク等の法人数は2008年度から2022年度にかけ17.6%減少(8,729→7,187法人)した。法人数は減少する一方で、収益総額は2022年度に過去最大の6兆9,493億円に達したため、三セク等の経営改善が進み、収益力が強化されたようにみえる。 三セク等全体の経常収支差額も、前々年度(951億8,740万円)から約2.3倍の2,172億2,186万円に増加した。しかし、2022年度に経常赤字の法人率は40.6%と過去11年間で最も高く、黒字転換に至らない企業が依然として残ることをを示している。 加えて、2022年度に地方公共団体から補助金を交付された三セク等は2,958法人で、三セク等の約半数(構成比49.4%)を占める。そのうち、2,765法人(同93.4%)が収益に計上した補助金は合計9,180億円にのぼり、収益総額6兆9,493億円の13.2%を占め、黒字額の合計3,033億円の3倍に相当する。これは、補助金収入が無ければ赤字に陥る三セク等が少なくないことを示す。 このほか、地方公共団体からの借入金は3兆5,535億円、損失補償・債務保証は2兆1,443億円と巨額に達する。この金額は目に触れにくいが、三セク等が破たんすると、最悪の場合、地方公共団体が負担を強いられ、財政が破綻するリスクも残している。 三セク等が地方公共団体に代わって公共性、公益性の高い事業を手掛ける意義は小さくない。ただ、人口減少や高齢化が進む地方公共団体では、財政収支の更なる悪化も想定される。それだけに採算性だけで割り切れない医療や交通機関、流入人口増が期待される学校招致(公立化)など、地域に貢献するサービス部門と民間移譲が可能な部門に分け、事業性の検証と決断が必要な時期を迎えているといえる。