現場スカウトの憂鬱 故障持ち選手の上位指名に現場からはブーイングも事前調査には「限界」
プロ野球の世界では、10月下旬のドラフト会議が終わると、12球団のスカウトたちの仕事は一旦リセット。担当エリアに指名選手がいるスカウトは、当該選手の「お父さん」役として仮契約から入寮、新人合同自主トレとフォローして、キャンプインまでのお手伝いをすることになります。 【画像】押さえておきたい「2024ドラフトの目玉」たちを厳選! 注目選手のプレー写真&寸評を一挙紹介 春先の寒さの中での視察や、夏場の炎天下のもとでの見極めを思えば、ある意味、スカウトにとっては1年のうちで最も穏やかな時期と言えるかもしれません。 しかし、12球団のスカウトの中には一抹の不安が消えないと話す人もいます。 「とにかく元気でいてほしい。それに尽きます。入団してから『故障持ち』だったことが分かると、やっぱりスカウトとしては肩身が狭いですよ。現場からの冷ややかな視線を感じてしまいますからね……」 一例をあげます。2023年のドラフト会議では1位で指名された12人中、実に7人が名門・東都大学野球リーグ出身ということで話題を集めました。しかし、即戦力とみられた7人のうち、実に3名がトミー・ジョン手術を行うことになったのです。 「現場は『調査不足』と言うかもしれません。でもスカウトは公式戦や練習試合に足を運び、しっかりと放れているのを確認した上で指名をしているわけです。指名される側も声高に『痛いところがあります!』とは言わないわけですよ。そんな中で、水面下でケガに苦しんでいることを知るのは至難の業です」(前述のスカウト) 精度の高い情報を、どうつかんでいくか。スカウトが名門校の卒業生であれば、先輩・後輩のツテをたどり、指導者から本音を聞き出すのも一つの手でしょう。さすがにビジネスを超えた関係を築いている人に、噓の情報は言わないもの。12球団スカウトの多くが、名門大学野球部のOBなのは、そのような情報戦に勝つためという背景もあります。 一方で、プロ初勝利やプロ初安打といったルーキーの節目で、本人から報告が届くことが、スカウト冥利に尽きる喜びだと、誰もが口を揃えます。 担当スカウトのいない新人選手はいません。彼らの奮闘を祈ると共に、その「お父さん」たちにも喜びの瞬間が訪れることを、願わずにはいられません。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]