トヨタの自己否定と変革への本気度 「世界に通じるクルマ」へ
いかがだろうか? 同乗者から「運転、うまくなったね!」と言われるクルマを作る。大変申し訳ないがトヨタがそんなことを言うとは信じられない。しかしこの言葉ほど、彼らの目標とするクルマ像をはっきり語ってくれる言葉はない。これが本気でできるとすればトヨタは「世界に通じる」かもしれない。 多数派のユーザーに伝わらないこととして切り捨てられてきたと思しき多くのエンジニアリング的ポイントについて、TNGAによって改善をすると断言しているのだ。その先でトヨタはどう変わるのだろうか? 例えば、豊川悦司が出演するCMを見た人は多いだろう。 このコマーシャルの中で、ほぼ日本専売車(中国では売っている)のクラウンを見て、フランス人の警官が「どこで買ったの?」とまくし立て、アナウンスで「クラウンは日本で買いましょう」と続く。 何年先になるかわからないし、そういう日が来るとは断言できないが、もしトヨタがTNGAによる改革に成功したら、わざわざ海外用に仕立てたレクサスではなく、クラウンが欧州の顧客に選ばれる日がくるかもしれない。それは自動車史を揺るがす大事件になるだろう。海外攻略モデルではない日本専用モデルが自動車先進国で売れる時代。それは誰も考えて来なかった世界である。 そういう可能性のある分岐点に今、トヨタはいる。成功するかしないかは神のみぞ知るだが、トヨタはそういう世界へ進もうと、どうやら本気で思っているようだ。 (池田直渡・モータージャーナル)